自動思考【2-2】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

今年最終回となりました。前回に続いて“認知の歪み”について、残りの5点を書いていこうと思います。

前回までは、

  • 白黒思考
  • 自己関連づけ
  • レッテル貼り
  • 〜べき思考
  • 過小評価の誇大化

の5点でした。

それでは残り5点を記していきます。

決めつけ
根拠なく感情的に決めつけ、自分の感情を現実に反映し、まるで事実かのように認識する。

<例>
「不安だらけだからプレゼン(試験)に失敗するに違いない」
「今日は気分が乗らない、こんな日は何事も上手くいかない」

感情的な決めつけが起こる時は、ネガティブな思考や感情が前に出ていて、ポジティブな思考や感情が薄くなっている時に起こりやすい認知の歪み。独自フィルターと密接な関係がある。
結論の飛躍
何の根拠もないのに、悲観的でネガティブな結論を出してしまう。

<例>
心の読み過ぎから→特定の人物が自分を嫌ったり悪い反応をしていると思い込む。

他社に出向いて行ったプレゼンが上手くいき、上司に報告したが上司は関心なさそう。いつもよりつっけんどんにすら感じる。→「きっと上司に嫌われている」と考える。
過度の一般化
よくないことが起こると「いつも決まってこうなる」「上手くいった試しがない」と考える。

<例>
プレゼンが上手くいかなかった。「いつも自分がプレゼンするとこうだ、自分は上手くいかない」
デートを断られただけなのに「どうせ自分は誰からも愛されない」
独自フィルター
ひとつの良くないこと、気に入らないことにばかり引っ張られ(こだわり)、他のことに目がいかなくなったり考えられなくなり、くよくよ考えネガティブになる。

<例>
会議でアイデアを出し周囲の評価は上々なのに、同僚の一人から批評されたことが頭から離れず悩み、ネガティブな考えになってしまう。
マイナス思考
良いことを無視するだけでなく、なんでもないことや良い出来事も悪い出来事にすり替えてしまう。

<例>
自分は何をやってもダメな人間だ、と考えている人(自己評価が低い)が、上司から評価されたり仕事が上手くいっても「これはたまたまだ」「まぐれに違いない」と考える。
このような認知の歪みを持つ人は、たまたまのミスでも「やっぱり自分はダメなんだ」と考える。

自分の中にある自動思考/認知の歪みに目を向け、普段から自分にはどのような“思考のクセ”があるのか、一度しっかり向き合うことで、生きづらさの軽減やイライラしやすい自分に気付くヒントになります。

この年末年始にこうした部分の自分に向き合って、来年は自分の思考のクセを意識しながら過ごしてみてもいいかもしれませんね。ひょっとしたら今までの生活や人間関係にちょっとした変化があるかもしれません。

本年のコラム掲載は本日25日で終了です。本年も読んでいただき、ありがとうございました。来年は1月10日火曜日から掲載し、その後は5の倍数日に掲載してまいります。来年もよろしくお願いいたします。

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自動思考【2-1】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

前回に続き“認知の歪み”についてお話しします。全部で10点ほどあるのですが、ここでは半分の5点を、次回に残りの5点を記していきたいと思います。

白黒思考(全か無か)
起こる問題のそのほとんどは白黒、全無のどちらかに決めることはできません。事実はグレーだったり、その中間にあるものだったりするものですから。

<例>
いつも満点だったテストで80点を取ってしまった。「満点じゃなければ何点でも同じ、自分はもうダメだ」と思う。

<例>
仕事でミスをしてしまい「もうこれで自分はおしまいだ」と思う。
自己関連づけ
何か気になると、望んでいないよくないことが起きた時に、自分には責任がないにも関わらず、自分のせいにして責任を感じてしまう。

<例>
彼が暴力を振るうのは自分が至らないからで、彼の望むことをできない自分が悪いんだ(DVにあっている人がよく陥る思考ですね)

<例>
職場でみんながよそよそしいのは、自分がみんなの足を引っ張っっているからだ。
レッテル貼り
ミスをしたり、上手くいかない時に「自分は負け犬だ」「使えないヤツ」「お荷物だ」と自分にネガティブなレッテルを貼ってしまうこと。レッテル貼りは“過度の一般化”の極端な形です。レッテル貼りをしてしまうと感情に飲み込まれ、冷静な判断ができなくなります。
〜べき思考
行動や思考に対し「〜すべき/〜すべきではない」と極端に考えます。この思考はその基準に無理に自分を合わせようとするため、自身を知らず知らずに追い詰め自己嫌悪に陥ったり暗い気分になってしまいます。また、その価値観の違う他者に「〜すべき/〜すべきではない」が向くと、イライラしやすく怒りを感じやすくなります。

<例>
「あの時自分は電話するべきではなかった」
「部下は言い訳をせず言われたことをすべきだ」
過小評価の誇大化
自分の失敗や短所を過大に受け止め、長所や成功成果を過小に自己評価してしまう。

<例>
些細なミスで「ああ、これですべて台無しだ」

とりあえずここまでとします。次回は残りの5点を書いていきます。

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自動思考【1】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

メンタル不調(憂鬱になりやすい/メンタル立て直しに時間がかかる/イライラしやすい)に陥りやすい人には、“物事の捉え方(認知)”に特徴があります。

認知の歪みには陥りやすいいくつかのパターンがありますので、自分はどのパターンに当てはまりやすいのか、自分にはどんな自動思考があるのかを理解しておくことが大切です。

自分にある認知の歪みを知るために次の3項目を書き出します。

  • 出来事
  • その時の考え(心に浮かんだ自分の声)
  • 気分/感情

<例>

・出来事
上司から「前回ボツになったプレゼン資料、まだあるよね?なぜボツになったのか自分なりの反省と次回どう改善すれば良いと思うのか、考えをまとめて記載しデスクに置いておくように」と言われたが、資料がどこにいったのかわからず、まだ取り掛かってもいなかったので「クライアント訪問や見積もり作成などで何かと忙しくて・・・」と言い訳めいた返事をしてしまった。

・その時心に浮かんだ自分の声
▶︎言い訳がましいと思われただろうな(心の読み過ぎ)
▶︎きっと上司の信頼をなくしてしまった、自分は無能だ(レッテル貼り)
▶︎上司が今回みたいなことを言ったのは、自分を信用していないからに違いない(心の読み過ぎ/マイナス思考)
▶︎今回ダメだったし上司にはもう信用してもらえない(過度の一般化)
▶︎何より早急に上司に言われたことをやらなくてはいけない(すべき思考)
▶︎期日までにできなかった自分の失敗だ、もうやる気がしない(心のフィルター/全か無か思考<白黒思考>)
▶︎上司のあたりが強いのは自分が役立たずだからだ(自己関連づけ)

いちいち意識しないだけで、これだけの心の声が自分の中にあります。

その結果、

・気分/感情

→不安 憂鬱 自己嫌悪 後悔 自分への怒り

などが生まれます。

※参考コラム:認知を制する者は感情(行動)を制す【3】

次回は【認知の歪み】について、どのような種類があるのか例を出しながら説明していきます。

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思考実験【2】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

前回に続きで、『テセウスの船』をアリストテレスの四原因から深掘りしてみたいと思います。少し長くなりますがご了承ください。

物事の在り方すべては『四原因』で説明できると考えたのが古代ギリシアの哲学者、アリストテレスです。

まず『四原因』とは・・・

・質量因 ・形相因 ・動力因 ・目的因

であり、

  1. 質量因・・・組成は何か?
  2. 形相因・・・形状は?
  3. 動力因・・・誰がどのように作った?
  4. 目的因・・・目的は何か?

になります。

アリストテレスは『テセウスの船』で重要なのは、それが“どのような形状か”を決定する2の形相因と考えました。形相因はその物の“見た目”を示していることはおわかりだと思います。

老朽化により幾度となく修理が重ねられた『テセウスの船』ですが、いくら当初からの部品がすべて入れ替わっても「見た目は変わらないので、それは同一と言える」というのがアリストテレスの解です。

次に組成素材の1の質量因から見てみましょう。

船の最初の部品はすべて取り替えられており、別の組成の素材が使われているので同一ではないと言えると思います。

しかし、3の動力因から見てみると、船は修理を重ねても当初と同じ技法で作り直されたであろうと考えられますので、同一であると言えるのではないでしょうか。

次に4の目的因から見てみましょう。

見た目は変わらず船であると認識できること、またテセウスが使用したという事実は変わらず同一であると考えられます。

このように、どのような物がどのように在るか?を細かく分解し考え、何が重要なのか各々の捉え方次第で思考実験『テセウスの船』の答えは変わってくるのです。

さらに<同じ>に着目してみましょう。

<同じ>とは“何をもって”<同じ>と言えるのか?

<同じ>という概念を考えてみます。

<同じ>の概念は【質】と【数】に分けられます。<同じ>の概念で、どちらに着目し重要視するかで『テセウスの船』の答えは変わってきます。

どういうことかというと・・・

『テセウスの船』は老朽化により、長い時間をかけてすべての部品が交換されていっています。これは【質】という点で考えると変わってしまっているため、<同じ>とは言えません。

しかし、『テセウスの船』と呼ばれる船は、建造された当初から現在に至るまで、この一隻のみで他には存在しません。そう考えると【数】という点で<同じ>であると言えるわけです。

次に時系列から考えてみます。

『テセウスの船』は修理に修理を重ねて、その部品すべてが入れ替わったとしても、建造された当初から現在に至るまでのどの時点でも『テセウスの船』として在り続けました。これを『テセウスの船ではない』とするならば、どの時点から『テセウスの船』ではなくなったのでしょうか。

最初に部品を取り替えた時?

最後に部品を取り替えた時?

さらに話を進め空間という視点から考えてみます。

私たちが生きる3次元は空間的な広がりです。平面(わかりやすくいうと紙面やガラス面といった“面”)が2次元であるのは皆さんご存知ですね。

4次元は立体的な3次元に時間的な広がりを与えた概念です。“一瞬一瞬”という短い時間を“区切って”考えると・・・一瞬前の『テセウスの船』と今の『テセウスの船』、一瞬後の『テセウスの船』は別の船と考えます。この考え方で考えると、老朽化から修理云々の問題とはまったく関係なくなってしまうのがおわかりでしょうか。

ミカンで考えてみましょう。

一瞬前のミカンと今のミカン、一瞬後のミカンは同じミカンではありません。一瞬が1秒であったとして、そのミカンは一瞬前のミカンより質が劣化していると言えるからです。

こんがらがってきたところで・・・

仕組みや構造から物事の本質を考察し、探ろうとする考え方は構造主義と言います。

変化し続ける物事のどこに注目するのか、何をもってその価値を定義するのか、人の数だけ答えはあります。

あなたの見方、考え方、捉え方は当たり前ではなく、100人いれば100通りの考え方があるということを改めてわかったのではないでしょうか。

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思考実験【1】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

師走になり今年もいよいよ残りわずかとなりましたね。寒くなりましたが、体調は如何でしょうか。

さて今回は『テセウスの船』という思考実験についてお話しします。以前そんなタイトルのテレビドラマもありましたね。

思考実験とは実際におこなわれている実験ではなく、頭(思考)の中でのみおこなわれる実験のことで、心理学/哲学/倫理学/物理学などさまざまな分野でおこなわれています。

今回はアイデンティティを深く問う哲学思考問題になります。

『テセウスの船』は、ある物体を構成している部品(さまざまなパーツ)すべてが入れ替わったとしても、それは過去あったものと同一であると言えるのかを考えます。この問題ではアイデンティティそのものをどう捉えているのかにより解答が異なります。

あるところにテセウスが乗ったとされる有名な船『テセウスの船』が保管されていました。その船は時間の経過とともに老朽化し、朽ちた部分は修理が繰り返され新しい部品に取り替えられてきました。

少しずつ船は新しい部品に入れ替わっていき、いつしか本来のテセウスの船にあった古い部品は一つもなくなり、すべての部品が新しいものになりました。

船の機能はもちろん、形や塗装といった見た目も当時テセウスが乗っていたとされる船と寸分変わらず修理されています。しかし、その船の元の船の部品はもう一つも残っていないのです。

ここで問題です。

すべて入れ替わったこの船は、過去あったテセウスの船と同じと言えるのでしょうか?

この問いへの解は、考えるその人自身の価値観や物事の本質をどのように捉えているかにより変わってきます。

身近なところにも同じようにアイデンティティを考える問題(?)があります。

創業以来、継ぎ足し継ぎ足し受け継がれてきた秘伝の鰻のタレ。メンバーチェンジを繰り返してきたアイドルグループ、などなど。

次回はテセウスの船をアリストテレスの四原因から深掘りしてみます。

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