認知を制する者は感情(行動)を制す<3>

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

3回目となる今回は、ネガティブな人に見られがちな自動思考と、例を挙げてワークシートでその妥当性を検証してみましょう。

ネガティブが人(鬱になっている人にも)に見られがちな自動思考。

  • 私は誰からも必要とされない。
  • 私の人生は何もかも上手くいかない。
  • 私は取り柄のない人間だ。
  • 私は負け犬だ。
  • 私には価値がない。
  • 誰も私のことをわかってくれない。
  • 楽しいことなんか一つもない。
  • 私はもう終わりだ。
  • 何をやっても上手くいかないに決まっている。
  • 生きていても良いことなんかない。
  • 我慢するなんて耐えられない。
  • 自分が嫌で仕方ない。
  • 消えてなくなりたい。

例を挙げますので、それが正しいのか誤りかを検証するための<4つのプロセス>で自動思考が及ぼす影響を書き出してみます。

●自動思考の例

食事中に夫に話しかけたのに返事がそっけなかった。
私をもう嫌いになったのかも、私の話なんてどうでもいいに違いない。→心の読み過ぎによる決め付け。

記入例を参考に自分でも記入してみてください。

<4つのプロセス>自動思考の妥当性を検証するために『自分に質問する』。

①→自分がそう考えている根拠は何か?

▶︎自分の考えていることと事実を混同していないか?(事実ではない“かも”しれない)
▶︎確かめていないのに早合点したり思い込みはないか?
②→何か他に別の見方はないか?

▶︎自分の考えやモノの見方だけがすべて正しいと言えるのか?
③→そう考えることでどのような影響がある?

▶︎そう考えることが自分の役に立つか?邪魔になるか?
▶︎そう考えることで、自分にとってどのような利益(良い面)と不利益(望まない面)があるか?
▶︎答えの出ない(ない)質問になっていないか?
④→どこかに思考の誤りはないか?

▶︎0ー100思考、自動思考、全無的な思考に陥っていないか?
▶︎思考の中に極端な表現はないか?
▶︎望まない/悪い面だけに目を向け過ぎていないか?
▶︎たった一つのことだけに気を取られ、自分だけに非があるように思っていないか?
▶︎自分と関係ないことまで自分と関連づけて考えていないか?
▶︎自分の責任とは限らないのに、自分に責任があると思い込んでいないか?
▶︎物事をあるがままに受け止めず、“こうでなければ”“〜すべき”と対処法を考えていないか?
▶︎確認もせず自分一人で先走り、勝手に予想していないか?

次に【考え(思考)と気分(感情)の記録シート】のワークシートを使用しながら、普段の自分の考え方の癖を見つけ、考え方から生まれる気分(感情)がどのようなものなのかを改めて意識してみましょう。

少し横道に逸れますが、「今の気分は?(感情は?)」を聞いても、考え(思考)と混同して答え方がわからなくなる人も多いので、気分(感情)の例を挙げてみます。感情表現が苦手な人ほど、気分(感情)と考え(思考)を混同しやすい傾向があるようです。

<気分(感情)の例>

不安、悲しみ、困惑、寂しい、同情、傷心、義務感、恨み、虚しい、焦燥感、批判的、無気力、絶望感、混乱、心配、劣等感、孤独感、恥ずかしい、イライラ、悲哀、憂鬱、猜疑心、見捨てられ感、距離感、恐怖、落胆、モヤモヤ、憐憫、不全感、万能感、敗北感、後悔などなど。

ほんの一部を抜き出してみましたが、まだまだたくさんの気分(感情)があるのです。なかなか目を向ける機会がない気分(感情)に、一番適切な“名前”は何か、を考えてみるのもよいかもしれませんね。

自分の考え方の癖を見つけて、“それが正しい根拠”は簡単に見つけられても、“それが正しくない根拠”はなかなか見つけにくいものです。そんな時は、

  • 自分の一番の友人や大切な家族、大好きな人がそう考えていたら、自分は何と声をかけるだろうか?
  • 過去に同じこと、似たような状況はなかったか?それはいつだっただろうか?今回と似ていても、以前との違いは何がある?
  • 今の考えが“完全に正しい”と言えなかった経験はない?
  • 今から10年後に今の状況を振り返った時に、今とはどのように違って見えるだろうか?
  • 自分でコントロールできないことまで自分でコントロールしようとしていないか?

これも自問自答して【考え(思考)と気分(感情)の記録シート】のワークシートと共に検証する際のヒントにしてみてください。

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認知を制する者は感情(行動)を制す<2>

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

二回目のとなる今回は、前回からの続きと、自動思考についてお話します。

前回、自分の気持ちを観察してみるワークシートを書いてみましたが、今回はそれを少し発展させたワークシートを書いてみましょう。良かったことと嫌だったことの2つを例に挙げています(【図3】)。

記入した中から“嫌だったこと”にフォーカスし、より詳細に自分を分析して書き込んでいきます。印象的な出来事一つを抜き出してみるので、今回は嫌だったことを抜き出していますが、嬉しいことでも嫌なことでも構いません。【図4】を参考に、自分がわかる形でササッと楽な書き方で大丈夫です。

こうやって“嫌だったこと”を改めて書き出してみると、思い出してますます憂鬱な気分になってきませんか?下のようなワークシートをベースにして、今度は自分で記入してみてください。

ここで『こんなことやったって嫌な気持ちになるだけだ!』と挫けないでください。これは、

出来事を→【振り返り】→気付き→次回に活かす

の振り返り部分で、嫌〜な気分になった

“考え(自分の中に浮かんだ心の声)”(←ここが今回の一番のポイント)

に中に、あなた自身の【認知の特徴】を知るヒントが隠されているのです。【図4】で言えば、『親は心配しているんだから、連絡くらいは入れたほうがよかった。ひどい言い方をして悪かった』になります。

誰でも最初は自分の考え(思考)は間違っていない、正当だ、と考えます。自動思考(アンコンシャスバイアス)は、繰り返し表れるあなたのパターン化した思考、思い込みですが、自分でその存在に気付くのは難しいという特徴があります。

他者から指摘されても『(自分だけじゃなく)みんなそう思うものだろう』『普通は(男は・女は・新人は・部下は・上司は)そんなものだ』と感情的な決め付けが顔を出し、自分が陥っている自動思考に目を向けることができない人も多く見られます。まさに、『みんなそう思うものだろう』や『男はそんなものだ』が紛れもない【自動思考】なのですが(笑)

それは“あなた自身”の考えであり、万人がそうではない、に気付くこと、自分にある自動思考を把握すること、これが最初の作業になります。

そのために、<起こった出来事に対し、あなたがその時に心の中にどんなセリフが浮かんだか(思考)、またその時の気持ち(感情)>を第三者視点で眺めてみることが大切で、視覚化することで自分の認知のクセを見つけやすくなります。

次回は、ネガティブな人がよく持つ幾つかの自動思考を挙げ、その自動思考が妥当か?を検証していきましょう。

【番外編】

常々意識していることがあって、それはインド独立の父、マハトマ・ガンジーの言葉から来ています。

建設的な思考を持ちなさい。なぜならば、その思考があなたの言葉となるからです。

建設的な言葉を語りなさい。なぜならば、その言葉があなたの行動となるからです。

建設的な行動をしなさい。なぜならば、その行動があなたの習慣を築くからです。

建設的な習慣をつけなさい。なぜならば、その習慣があなたの価値となるからです。

建設的な価値をつけなさい。なぜならば、その価値があなたの人生そのものになるからです。

Mahatma Gandhi

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認知を制する者は感情(行動)を制す<1>

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

積極的に望まなくても、ただ生活をしているだけで、私たちの周りにはさまざまなことが起き、それに巻き込まれてストレスを感じ疲弊したり、巻き込まれなくても影響を受けて気分を波立たせたりします。

今回から<認知><自動思考/自分にある自動思考><自動思考を検証する>と3回に分けて、わかりやすく認知三昧でお話します。

まず、認知が変わると反応が変わることのわかりやすい例を挙げてみます。この場面ではあたなは妻だと考えてください。

例:帰宅した夫が眉間にシワを寄せ、険しい顔をしている。

あなたは、『家事もやったし頼まれた支払いも済ませた』『やましいところもない』のであれば、夫に対し『仕事で疲れたのかな』『何か嫌なことがあったのかな』と考え、「大丈夫?先にお風呂に入ってリラックスしたらどう?」と自然体で言えるでしょう。

これが、出かける前に大ゲンカしていたとなると、『まーだ怒ってる』『私のこと責めてるのかも』『まさか離婚なんて言い出さないよね?』と考え、どう話しかけていいのかわからなくなったり、腫れ物に触るようにぎこちなくなってしまうのではないでしょうか。

夫の“険しい表情”に対し、あなた自身がどう意味づけするのか?は、その状況によって変わりませんか?この、“状況によるあなたの意味づけ”の仕方は、

あなたの普段からの認知の“クセ”により決められる

ことが多いのです。何度か認知についてお話していますが、

認知とは、ものの見方、考え方、受け止め方

です。この、“その人が持つ認知の特徴(偏り/歪み)”が、思っているよりはるかに気分や行動に影響を及ぼすものなのです。(【図1】)

次にワークシートを書いてみましょう。ここでは仕事を例に挙げてみましょう。

こんな感じでしょうか。このように自分の状況を視覚化してみるために【図2】のワークシートを使用します。

次に自分がどのようなことを良い(心地良い)と感じ、どのようなことを嫌だ(不快)と感じるのか、考え方の傾向も視覚化してみましょう。

下の下線部に自分の気持ち(感情)を書き出してみてください。幾つでも構いませんが、一つ以上は書いてください。

  1. 裏切られると、私は(   )
  2. 誰かに怒られると、私は(   )
  3. 褒められると、私は(   )
  4. 約束の時間を大きく超えて遅刻されると、私は(   )
  5. 見知らぬ人ばかりの中に入ると、私は(   )
  6. 自分のことを理解してくれている人に対し、私は(   )
  7. 自分のことばかり話している人を見ると、私は(   )
  8. 偉そうに振る舞う人を見ると、私は(   )
  9. 理不尽だと感じることが起きると、私は(   )
  10. 好意を向けている人がいると、私は(   )
  11. 無視されると、私は(   )
  12. 自分にではなくても、誰かが怒鳴っていると、私は(   )
  13. 電車内で激しく泣く赤ん坊を抱いた母親に対し、私は(   )
  14. 列に横入りされると、私は(   )

これは正誤のない問いで、どのようなこと(時)に自分はどのような気持ちになるのかを、“自分がわかるように視覚化”し、少しだけ自分を客観視してもらうための問いです。

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ADHDの課題【時間管理】について<5>:心理的抵抗に対処する。

⚠︎:発達障害は先天的な脳の発達の偏りなので、親の躾や環境、また、本人のせいでもありません。発達障害をややこしくしているのは、無理解、無知からくる不適切な対応などでさまざまな神経症や精神疾患を併発したことによる二次障害といえます。

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

本連載最後となる5回目は、ADHDの人の【心理的に集中を妨げるもの】や【集中力のコントロール】についてお話を進めます。

ADHDを持つ人は、引っ張られやすい不安感情や抑うつに加え、何かしら他者に対してイライラと不満を持ちやすい(面倒、難しい要求ややりたいことへの制限など)ことを自覚し、“怒っている自分、これまでずっと変えたいと思いつつ、自分には絶対無理だと感じる自分”、【変容に反抗している自分】に気付き、自分の認知(思考)を同定し反論してみる練習をしてみましょう。

今までの連載<1>〜<4>でお話したことの振り返りになりますが、おさらいしてみます。

  • 達成できる小さな、簡単なことからスタート。
  • 難しく面倒なことは、達成できるであろう大きさに分解(分割)。
  • スケジュールを組む時には対処しやすい“まとまり”に分解し、まとまりを終了できた時には“強化”(自分へのご褒美を計画)。
  • 完了と同時にTO DOリストの項目に完了印をつける(視覚的に“できた”を感じるモチベーションが維持しやすくなります)。
  • 強化(ご褒美)は随伴的であり、やらなくてはいけないことを完了していなければ、自分にご褒美を与えてはいけません。←「後でやるから先にご褒美」はダメ!

自分にとって集中を妨げるものには何があるのか考えてみます。

ADHDの人は、刺激に敏感に反応し集中が分散してしまうので、そうならないために、目や耳に余計な情報が入らないよう先に対策を取っておくのは有効です。

●携帯電話は遠くに置くか、留守電にしてサイレントモードに設定。
●本や雑誌は目につかない場所に。
●テレビ、パソコンなどは消す。
●家族にも上記を宣言し協力してもらう。

外部からの音を柔らかく遮断するイヤーマフデジタル耳栓、集中しやすいリラックス状態を保つために、ホワイトノイズ発生装置(レクトロファンマイクロ)も役立つと思います。もちろん音量は耳障りにならない音量で、ですが。

ADHDの人は、目の前の自分にとって楽しい報酬を、遠い先のより自分にとっては大きな報酬より選ぶ誘惑に駆り立てられがちです。ここで自分との闘いになると思います。実際に、闘っては毎回負けている息子を毎日見ています(笑)。この重要な岐路に、目先の楽しさを取ることと、課題をやった後の報酬、達成感、自信、他者からの評価といった現実的な報酬を書き出してみましょう。

△明日提出のやらなくてはいけない課題があるのに、見たいテレビがあり、我慢できずに見る。→取り組むのが億劫になり、お風呂から上がったら・・・ご飯食べたら・・・と先送り癖が出現。→「うーん、明日、早起きしてやればいっか」→早起きできない、もしくは早起きしてもいつもの「まだ時間があるから大丈夫」癖が出て、結局巻きに巻いて雑な仕上がりか、まったく手をつけていないことになる。→当然叱られる、呆れられる、信用を無くす・・・結果評価が下がる。→自己嫌悪から自己評価も下がり、「ダメな自分」から自己肯定感も下がる。

こうならないために

○見たいテレビは録画にして、明日提出の課題に取り組む。→終わった後に「完了させた!」という満足感と達成感。→ご褒美の動画を観る(気持ちを引っ張るものがないので動画を楽しむことに集中できる)。→次の日に胸を張って提出(できなかった(やらなかった?)言い訳をしなくていいので気が重くない)。→完了させたことへのそれなりの評価。→やり遂げた自分への自己評価アップ。

これを自分に当てはめて視覚化してみてください。

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ADHDの課題【時間管理】について<4>:認知面の気付きと対策を考える。

⚠︎:発達障害は先天的な脳の発達の偏りなので、親の躾や環境、また、本人のせいでもありません。発達障害をややこしくしているのは、無理解、無知からくる不適切な対応などでさまざまな神経症や精神疾患を併発したことによる二次障害といえます。

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

4回目、次回5回目は、ADHDの時間管理/認知面の気付きと対策について考えていきます。

認知(思考)の歪みには、不安や抑うつを生む自動思考と呼ばれるものも多く含まれますが、あまりにも普段の思考に密接であることから、なかなか気付きにくいものです。

自動思考とは、起こった出来事に対する咄嗟の評価

で、その評価が正しいこともあれば、そうでもない時もあります。

ASDやADHDを持つ人は、“失敗”から自動思考が知らないうちに徐々に歪んでいくので、不安や抑うつに引き込まれやすい傾向にあります。

自分の【自動思考の中にある認知の歪み】に気付くことが第一歩になります。

克服するための第二歩が、

【歪んだ自動思考に気付き、その思考に自ら反論し、それに代わる合理的反応を自身で持てるようになる】ことです。

起こった出来事に対する【認知】が【感情】を生み出すのですが、この“認知(思考)”は、出来事が起こった瞬時に自動的に生み出されるものなので(だから自動思考)、その結果生まれる感情にばかり目を向けがちで、【認知】そのものはほったらかし、意識しないことがほとんどです。

認知の歪みを引き起こす自動思考にはさまざまな出どころがあるのですが、本題から外れるので認知について掘り下げてお話する機会に取っておきます。

自動思考、認知の歪みに気付くためには、感情そのものではなく、感情が生まれた出来事に対し、自分が“どのように受け取ったか”に意識を向ける練習が必要になります。

“不快”“辛い”“不安”“怒り”という感情の変化が起こった時にメモを取り、その感情にラベル付けしてみます。←毎回やるのは大変ですから、やれる環境にある時に意識的にやってみましょう。

前提)明日の大切なプレゼン用資料作りを任され、それを今夜中に仕上げなくてはいけないので徹夜になりそうです。資料作りに取り掛かろうとした時に憂鬱な気持ちに襲われるかもしれませんし、想像しただけで強い感情に襲われるかもしれません。

自動思考は何らかの感情と直接関係しています。今回、具体的にどのような自動思考が表れやすいのか見ていきましょう。

●それが【不安】からの場合
「どうしよう、もし失敗したらどうすればいいんだ・・・」「もうプロジェクトから外されるかもしれない」

●それが【抑うつ】からの場合
「あーダメだダメだ、こんなんじゃダメに決まってる!」「自分はなぜこんなことも満足にできないんだ」

●それが【怒り】からの場合
「自分一人にこんな膨大な資料を作らせるなんて上司は酷すぎる!」「要求レベルが高すぎる!きっと私に失敗させようとしてるんだ」

このように、起こった出来事(明日までに作成しなければならないプレゼン資料)により湧き上がってきた自分の感情(不安、抑うつ、怒り)を俯瞰し、じっくり観察してみることで、感情や行動(完璧主義や回避傾向)のトリガーとなる自動思考を同定していきます。

【認知の歪み】の具体例

●二分割思考(0か100か)完璧主義
物事を白か黒か、0か100かの両極端でしか捉えられない。
例:「もしこれで契約が取れなければ、もう自分は終わりだ」

●過度な一般化
一つのネガティブな出来事だけを根拠に、すべて悪いほうに捉える。
例:「自分は何一つまともにできない」「自分は幸せになんかなれない」

●“すべき”思考
過度に「〜すべき」「〜しなければならない」と考え過ぎ、それが実現できないと罪悪感や自罰傾向が高まる。自分の中の“べき”に則った行動をしてしまう。
例:「良くないおこないをする人には、どう思われてもその人のために注意すべきだ」「自分はクズなんだから、何を言われても黙って甘受しなくてはならない」

●レッテル貼り
たった一度の出来事で、自分や他者にネガティブなレッテル貼りイメージを固定してしまう。
例:「どんな綺麗事を言ったってどうせ裏切られる」「所詮女(男)はこういうものだ」

●結論の飛躍
結論が正確かもわからないのに(そのような事実はないのに)、ネガティブな解釈をする。<心の読み過ぎ、空気の読み過ぎ>と<根拠があるわけでもなく相手に確認もしていないのに、相手は自分に対しネガティブな反応をしていると思い込む>という二通りのタイプがある。
例:「自分が話をしていたのにスマホを見た、きっと話が面白くないに違いない」

●先読みの誤り
起きてもいないのに、悪い結果になると勝手に予想し、その予想が確立した事実と思い込む。
例:「同窓会で嫌な思いをするに決まってる、だから行くものか」

●選択的注意(以前お話した“選択的注意”とは違います)
小さな一つのネガティブな側面だけを取り出し、他を無視してそのことだけを考える。
例:「その髪型似合うね、髪の色はもう少し暗いほうがいいかも」に対し「どうせ似合わないと思ってるんだろう」

●自分への関連付け
実際に自分に責任がないことでも、ネガティブな出来事をすべて自分のせいだと考えてしまう。
例:「私が発表しているのにあの人が出て行ったのは、私の話が退屈だったからだ」←たまたま電車の時間だったかも、具合が悪く席を立ったのかも、と思わない。

●破滅思考
もし○○が起こったら、もしくは、〇〇が起こらなかったら破滅だ、と決めつけて考えてしまう。
例:「もし面接に落ちたらおしまいだ、自分は耐えられないだろう」「彼がいなくなったらもう生きていけない」

認知の歪みは極端な思考を呼び、不快感や不安、怒りといった強い感情を生み出しやすくなります。認知→感情、の感情にだけ目を向けるのではなく、感情の出どころ(認知)に意識を向ける練習を続けると、自分の自動思考に気付けるようになります。

自分の自動思考における認知の歪みを同定できたら、合理的な反論で、その歪みに自分で反論してみます。自動思考→認知の歪み→その認知に反論した合理的反応・・・の例を一つ出して考えてみましょう。

<例:やっとこぎ着けた就職の三次面接前夜>

  • 自動思考:次こそ面接で上手くやらなくては。はぁ、ちゃんとやれるのか本当に心配だ。毎回こんな時は神経質になってしまって、本来の自分が見せられたことが一度もない。もう10回目の面接だ・・・でも、こんな好条件な仕事は二度と私には巡ってこない。
  • 認知の歪み:破滅化、過度の一般化、先読みの誤り
  • 合理的反応:「いかんいかん、自分は少し神経質になってるのかも。でも、面接なんて誰でも緊張したり神経質になるものだよな。緊張するなんて面接する側もわかってるはずだし。よし!履歴書も職務経歴書も丁寧によく出来てる、緊張して多少上手く話せなくてもこれで自分をわかってもらえるだろう。」

もう一つ例を出します。

<何日も前から親に「片付けるように」と言われていた散らかった部屋、「そういえば片付けたの?」と聞かれました。>

  • 自動思考:「あっ、何もやってないや。はぁ、つくづく自分って怠け者でダメダメな人間なんだろうな」
  • 認知の歪み:過度な一般化
  • 合理的反応:「確かに自分を片付けは苦手で時間もかかる。でも、だからといってすべてにおいて怠け者というわけではないよな。まとめては難しいけど、今日はタンスだけ明日は机と机周り、というふうにやれば自分でもできるぞ!」

合理的反応を目指すためには、まず【認知の歪み】やそこからくる【自動思考】に気付かなくては始まりません。

ちょっと自己分析してみませんか?

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ADHDの課題【時間管理】について<3>:優先順位をつけましょう。

⚠︎:発達障害は先天的な脳の発達の偏りなので、親の躾や環境、また、本人のせいでもありません。発達障害をややこしくしているのは、無理解、無知からくる不適切な対応などでさまざまな神経症や精神疾患を併発したことによる二次障害といえます。

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

8月からのコラムの続きで3回目となる今回は、ADHDの時間管理/“優先順位”“TO DOリスト”について考えていきます。

優先順位を決める。
スケジュール帳を使って、優先順位をつける。

を目標に、TO DOリストの作成や優先順位をつけるコツを身に付けましょう。

優先順位をつけることがなぜ重要なのかお話します。

日常やらなければならないこと(やりたいことも含む)をすべて終わらせるために、残念ながら自分が思うほどの時間はないのが現実です。 ADHDがないほとんどの人でも、TO DOリストに挙げた全部に取り掛かり終わらせることは難しいものなのです。ADHDを持つ人は、今その瞬間に興味が向いた、目に入った目先の関心事に注意が向く傾向が強く、注意を持続することや注意の転換も苦手です。

参照: “注意”をADHD(ADD)の特性から考える 分割的注意とは?

また衝動性が高いのでそれを意識して抑える積極的努力も必要となります。そのため、ADHDを持つ人には【TO DOリストを視覚化 → 優先順位をつける】ことが特に重要となります。

先延ばしや後回しクセもあるので、提出物や支払期限が過ぎてしまうことを防ぐためにも、まずはTO DOリストを作成しましょう。TO DOリストは、1週間〜毎日のリストを作ります。そのためには、やらなくてはいけないことを優先順位云々気にせず、全部を書き出すことからになります。期日や時間を気にせず、思い付くまま書き出す場所を持ち(カレンダーやチラシの裏で十分です)、これは全体像として取っておきます。

次に、リストの項目横に優先順位や緊急性によりわかりやすく印をつけます。例えば、振り込み、支払い、引き落としの期日が決まっている、提出間近といった緊急性から<1:家賃やカード引き落とし、2:仕事、役所などの提出書類を書く、3:印鑑が必要、4:○日までに提出する>というように。

ゴミ収集は決まった曜日に毎週あるものですから、そこそこ大切でも重要度はそれほど高くありません。忘れても大丈夫とは言いませんが、やらかした感満載で真っ青になるほどのことではないですよね(笑)。

全体的なリストを書き出したら、重要度や緊急性が高いものを取り出し、1週間または1日ごとのTO DOリストを作成しましょう。ここまでやってからそのリストをスケジュール帳の予定に組み込みます。

●重要度、緊急性をもとに、優先順位、類似性によりやらなくてはいけないことを分類します。
→電話連絡しなくてはいけない用件などは一度に済ませたり、請求書はできる限りまとめて支払いなど。

●【今すぐ/なるべく早め/後で(少し後でも大丈夫)】を【A/B/C】というようにわかりやすく優先順位のルールを決める。
→ABCや★☆、●○など馴染みやすい記号などが目に入りやすく、意識に留まりやすいですよね。

優先順位をつけるコツが幾つかありますので、参考にしてみてください。

  1. 仕事に必要な時間を見積もり、スケジュールの中で時間配分をする。
  2. 会社(職務)以外の家庭や友人関係の用事は、就業時間外の時間や休日に限定する。
  3. 常時スケジュール帳を持ち、確認する。
  4. 自分の体内時計を意識し、疲れておらず、もっと集中できる時に、時間がかかったり面倒な事柄を予定に入れる。
  5. 効率を上げるため、類似性を考えてスケジュールを組む。
  6. できるようなら、面倒なことと楽しいことを抱き合わせてやる(掃除は大好きな音楽を聴きながらなど)。
  7. 常にやるべきことに優先順位をつけ、優先順位から外れたこと(自分がやりたいことや関係ないこと)をやりたい欲求が出たら、全力で抗う。←欲求に流されない意識。

何度か出ていますが、

【取り掛かれないのは最初のステップが大き過ぎる】

ので、対処しやすく分解しましょう。

次回は、時間管理における情緒的な問題を考えていきます。

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ADHDの課題【時間管理】について<2>

⚠︎:発達障害は先天的な脳の発達の偏りなので、親の躾や環境、また、本人のせいでもありません。発達障害をややこしくしているのは、無理解、無知からくる不適切な対応などでさまざまな神経症や精神疾患を併発したことによる二次障害といえます。

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

2回目となる今回は、ADHDの時間管理/随伴性自己強化を使い、気が進まないタスクを少しでも楽しいものにする、についてお話します。

複雑な仕事や気が進まない事柄を対処しやすく分解する。

随伴性自己強化を使う。→やりたくない(不快感を伴う)ことを終わらせた後に、自分自身に報酬/ご褒美を与える計画を立てる。

自分への強化子(具体的な報酬、ご褒美)リストを作る。

この3つが今回のキーワードです。

単調な繰り返しがひたすら続く。

・興味がなく退屈な仕事。

・複雑で細かく時間がかかる仕事。

などは、ADHDを持つ人にとって完遂が特に困難です。

これらに対処するために効果的なのが、

【仕事(やらなくてはいけないこと)を大きな塊と見なさず、無理なく取り組める程度に小分け、“まとまり”に分解し、“まとまり”となった仕事が一つ完了するごとに自分に報酬(ご褒美)を与える】

というやり方です。

大きな仕事(複雑で時間がかかる、手順が面倒など)がドーン!と目の前にあると、山のようにやらなくてはならないことばかりに意識が向き、途方に暮れて、どこから手を付ければいいのかわからず、ますます手を付けるのが億劫になります。

そこで、自分がやろうと思っている仕事のボリューム、それを完了させるために費やす時間(あるいは労力)を“これなら容易に終わらせられる”と感じられる程度(のまとまり)まで小分けします。

大枠で<大掃除>を例にとると、「やることは何だかいっぱいだし大変そうメンドクサー」・・・になるので、“今日はすべての部屋の窓だけ”“トイレだけ”“バスルームだけ”と計画を立て、『他はやらない』と決め、小分けしたそのまとまりにだけ取り組む感じです。まとまりの一つである“今日はすべての部屋の窓だけ”を終わらせた後に、“好きなDVD(動画、ゲームなど)を1時間半”というふうに、随伴性自己強化のために前もって書き出していた“ご褒美リスト”から、自分に対し“強化子(ご褒美)”を与えます。

難しいのは、「ご褒美を先にもらっておいて後から頑張ればいいや」という、いつもの先送りしそうな気持ちが持ち上がることです。ADHDは極度に面倒臭がりでもあるのです。息子は毎回このパターンで、自分一人ですぐに終わりそうなことも完遂できず、鼻先にぶら下げるニンジンを先に欲しがるので(笑)、私がストッパーや柔らかい鞭になっています。

前記の“すべての部屋の窓だけ”掃除も、『うちには○枚窓があるから、だいたいこの位の時間がかかるな』と見通しを立てなくてはなりませんから、ここで必要なのが、【1】でもお話した

自分はこの(ボリュームの)仕事を終わらせるのに、どのくらいの時間が必要か

の見通しを立てられることが重要になってきます。時間を少なく見積もると焦って雑になったり抜き落ちが出てきますし、多く見積もり過ぎると、「まだ時間あるから大丈夫だし〜」とダラダラやりながら目についたテレビや雑誌などに注意が逸れてしまいます。なので、

今の自分の集中が続く時間を自分自身がわかっていないといけない

のです。

ADHDを持つ人には【手を付けられないのは最初のステップが大き過ぎる】というのがあるので、前記の“今の自分で容易に終わらせるだろう”程度の小さなまとまりにし、取り掛かるハードルを下げるのです。

より細かく大掃除を例にみてみましょう。

やる気があっても、気持ちとやる気だけが大きく、いざとなると取り組む(実行)ハードルが高いのがADHDです。

初めは【すべての部屋の窓だけ】でしたね。窓掃除に必要なものは何でしょうか。それをイチから探して準備するところからだと、ADHDにはそれだけで面倒で面白くないひと仕事になってしまい、本来の目的である窓掃除に辿り着く前に集中が途切れる可能性がありますから、前日準備という予備日を用い【窓掃除に必要な掃除用具を全部揃え、2日目にすぐに取り掛かれるように目につくところに置いておく】を目標にしてみましょうか。

バケツに雑巾、洗剤に必要ならスクレイパーや下に洗剤が垂れないように敷く新聞紙、汚れものを捨てるビニール袋など。1日目はまず、考えながら何が必要か最初に書き出し、それからひとつひとつ準備していきます。1日目は【窓掃除】はしなくていいわけですから、終わりの見通しが立てやすいですよね。集中も持続できるはずです。

2日目、もう窓掃除の準備は終わっていますから、それを見れば大掃除で窓掃除をする予定だったことは思い出しますし、すぐに作業に取り掛かれます。仮に『(今日の、今の)自分の集中は40分が限度かな』と思うなら、ひと部屋の窓だけならラクに終わらせられると考えられるので、まずは目先のひと部屋の窓を終わらせ、強化子(例えば好きなお菓子を食べて15分休憩などのご褒美、報酬)を与え、次の部屋の窓掃除をするとよいと思います。

家に何十枚も窓がある人を想定していないので、ひと部屋終わるごとにお菓子を食べて15分休憩しても、1日あればすべての窓掃除が終わります(笑)。

仕事を絶対に終わらせられる小分けの量にして、「おー!できたできた終わった!頑張ってできたよ、自分」という

小さな小さな成功体験を積み重ねていくことが重要

なのです。最初に、自分自身に報酬(強化子)を与える計画を立てると話しました。←(随伴性自己強化)これは自分の好きなことで構いません。ウォーキング、友達に電話、ネット、おやつ、散歩、テレビや動画視聴など。取り掛かることや完了させることができずに悩んでいるのなら、仕事が終わったらすぐに手に入れらるような強化子を考えてみるとよいでしょう。

時間記録、時間見積にはこのような雛型があるとすぐに書き込めると思いますので参考にしてみてください。

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ADHDの課題【時間管理】について<1>

⚠︎:発達障害は先天的な脳の発達の偏りなので、親の躾や環境、また、本人のせいでもありません。発達障害をややこしくしているのは、無理解、無知からくる不適切な対応などでさまざまな神経症や精神疾患を併発したことによる二次障害といえます。

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

ADHD(重複含む)を持つほとんどの人にとって、時間管理はとても厄介な問題です。

いつの間にか時間が経っていた、時間がなくなった・・・と感じることが多いのに、やらなくてはならないことがある時に、なぜか時間が足りません。きっと時間経過に謎を感じている人も多いのではないでしょうか。忘れやすさや時間管理に衝動的な言動、衝動買い。困り感に目を向けると、ADHDには生活上困る要素がたくさんあります。

今回から数回にわたり【時間管理】についてお話していきますが、初回となる今回は、さまざまな困り感の中から【時間管理/時間を意識する、スケジュールを組む】について考えていきましょう。

①自分の中にある時間意識を改善する。

スケジュール帳を使い、あなた自身の日々の活動に必要な時間を記録していきます(起床〜身支度〜食事〜出掛けるまでなど)。

とても骨の折れる面倒な作業ですが、効率よく予定を立てるためには物事を終わらせるのに“自分は”どれくらいの時間がかかるのか見当をつける必要があるからです。常に目につくところに時計がなければ時間をうまく管理することは不可能ですから、どの部屋にも目につくところに時計を置き、支障がない範囲でできれば見やすい腕時計を身につけ、「何時かわからなかったから」という自分への甘えをなくしましょう。もちろん、置いておくだけでは時間管理はできませんから、時計を意識して見ることが大切です。

「時計なんて見なくて大丈夫」と思った途端、問題に陥ります。時間はその経過を意識して追っていかないと、知らない間に過ぎ去っていくものだからです。←結果『私の時間、どこいった?』になります。

②スケジュール帳を準備しましょう。

スケジュール帳は1冊だけにし、時間とスケジュールが書き込めるよう1マスが大きいものや、1日を時間軸で書き込めるものを選び、開くとすぐにわかるようなものにしましょう。

時間管理を身につけるために日々使うものですから、見た目や可愛さやカッコよさではなく、自分が書き込みやすく見やすいものを厳選し、その1冊に専念し途中で放り出さないようにしてください。すぐに取り出し書き込めるように、ペンホルダーをつけたり、差し込めるペンを選び、常にペンも一緒にしておきます。お気に入りの使いやすいペンや付箋を使うとモチベーションも高まると思います。

ADHDの面倒臭がりが発動すると、すぐそこにペンがなければ、わざわざペンを持ってくることや探すことすら面倒になり、結局スケジュール帳を書かなくなるか、先送り癖が出て「後で書くからいいや(本人は覚えておけるつもりでも実際忘れ去ること多→結果書かない)」になります。

今は便利なアプリもあるようですが、私は敢えてアナログな手書き、スケジュール帳を勧めています。これは『アプリは悪!』ではないので、自分に一番合ったやり方で構わないと思っています。

③やらなくてはいけないことや約束の時間など、すべてスケジュール帳に記入する。

やらなくてはいけないことや約束を書くことで、スケジュールが確約するのだと意識してみてください。

④毎日、少なくとも朝、昼、夜にスケジュール帳をチェックする。

計画なしで1日をスタートさせない癖をつけましょう。いくらスケジュール帳に書き込んでも、定期的にチェックしなければ意味がないので、チェックすることを毎日繰り返し繰り返し習慣にしてください。

夜は、翌朝にやらなくてはいけない服薬や持っていく物、提出課題、人と会う予定があるなら待ち合わせ時間や移動交通機関などの確認、朝はスケジュール帳をチェックし、やらなくてはいけないことをやり、何にどれだけ時間がかかったのかも記録します。少なくとも1日1回はスケジュール帳を更新し、完了していない項目や変更があった部分のスケジュールを立て直してください。書いて終わり、見て終わり、だと時間管理になりません。

最初はスケジュール帳をチェックするのも忘れがちかもしれないので、スケジュール帳チェックのキーワードや合図を自分の行動の中に関連付けて決めましょう。例えば・・・朝顔を洗ったら、コーヒーを淹れる時、ランチ終了後すぐ、歯磨きが終わったら、お風呂から出たら、などです。

⑤うまくスケジュールを組むコツを身につけましょう。

繰り返しおこなうこと(服薬、朝シャワーの人はシャワー、月末の請求書払い、銀行など)は毎回同じ時間に予定してください。

毎月決まった日の支払いなど、予定を立てる上でわかっていることはスケジュール帳に書き込んでおきます。難しいことや時間がかかると思われることは、最もやる気がある(疲れていない)と考えられる時に設定してください。

「自分は今とてもやる気がある、元気だ」と感じた時には、やりたいことではなく最も面倒、困難だと思われることから取り掛かりましょう。これには今まで先延ばしにしてきたことも含まれます。

面倒、困難なことに取り掛かった場合、途中で「後でまたやろう」と先延ばしにすることは止めましょう。止めたことを再開するのは、最初に取り掛かった時よりもはるかに困難だからです。

小さな事柄は“すき間時間”に組み入れます。例えば、列に並んで待っている時、バスや電車に乗っている時、お風呂に浸かっている時間やお湯を沸かしている時間、洗濯待ちをしている時間など。

スケジュールはキツキツに組まず、必ず“リラックスタイム”を挟みます。キツキツにスケジュールを組むと、焦りから抜け落ちが増えたり、息つくひまがない!という気持ちから心身疲労が高まります。

すき間時間にできる小さなことは何かを考えてみましょう。ざっくりスケジュールを立てる、郵便物を開封したり請求書を仕分ける、夕食や週末の予定を決める、読もうと思っていた本を読んだり音楽を聴く、など。

すき間時間は時間の断片です。この小さな“時間の断片”を有効活用することで時間を節約できるので、改めてこの“すき間時間”を意識し、何ができるかを考えてみましょう。スケジュール帳を見返すことで、あなたにも絶対にあるすき間時間がどこにあるのか、わかると思います。

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自己満足だけで終わらない厄介なメサイアコンプレックス

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

困っている人の力になりたい、助けたい。

社会に貢献したい、役立ちたい!

大なり小なり誰にでもある欲求ですし、それ自体はとても尊い心がけだと思います。しかし、メサイアコンプレックス(救世主妄想)の場合、少々厄介です。

他者を助けることでトラブルを引き起こすメサイアコンプレックス。

さまざまなトラブルとは“人助けをしても嫌がられる(迷惑がられる)”“自己犠牲で疲れ果てる”“不健康な人間関係になってしまう”などですが、なぜ他者を助けることでトラブルが起こるのでしょうか。

まず、メサイアコンプレックスを持つ人には幾つかの特徴があります。

●優しそうな雰囲気(優しい)
●自分を犠牲にする
●問題を抱え苦しんでいる人の側にいる
●ボランティア活動が好き
●他者からのアドバイスや意見を聞かない

それではひとつひとつ見ていきましょう。

  • 優しそうな雰囲気(優しい)

メサイアコンプレックスの人は困っている、問題を抱えている人を見過ごせません。そのような人を見つけると優しく声を掛けます。相手を助けたいという気持ちはもちろんですが、相手がこれからも自分を頼る仕組みを作ろうとする意図が無意識にあります。

  • 自分を犠牲にする

これほど頑張っている自分には大いに価値がある、と考え、今の状況に疑問があったり自己犠牲から本人も心身に疲労を感じていても、他者助けをすることでしか自分を満たすことができないので、やめたくてもやめられなくなっています。

  • 問題を抱え苦しんでいる人の側にいる

メサイアコンプレックスの根底には“人助けをすることで自分を満たしたい”欲求があるので、欲求を満たすために“助けられる他者”が必要です。そのため、問題を抱えている人を見つけて側に寄り添うのです。相手の世話(?)を続けることで『こんなに一生懸命尽くす私には価値がある』『この人には私が必要なんだ』(共依存の始まりですね)と感じ、自分の気持ちを満たすのです。問題を抱えている人は往々にして余裕がなく、普段冷静な人でも冷静さを失っていることが多いので、そのような心理状態の時にメサイアコンプレックスの人が現れると、ついすがってしまいます。これが共依存を生んでしまうケースも多くあります。

  • ボランティア活動が好き

ボランティア活動には手っ取り早く自分の中にある無意識な欲求を満たすことができる環境が整っているからです。ボランティア活動では一人一人に役割が与えられ、他者や社会に貢献することで『人の役に立っている』『自分は必要とされている』とわかりやすく感じることができるので、自分を満たすことができるのです。ただ、本当に奉仕の気持ちでボランティア活動をしている人も多くいるので“ボランティア活動をしているからメサイアコンプレックス!”では決してありません。メサイアコンプレックスの人は、自分の思いどおりにならないことが起きると急激に熱が冷め、そのボランティア活動を辞めてしまいます。

  • 他者からのアドバイスや意見を聞かない

メサイアコンプレックスの人は、“これが正しい”“これが(こうすることが)この人の(社会の)ためになる”という、自分なりの正義感や思い込みが強いので、「自分は間違っていない!」という気持ちを持っています。そのため、他者からのアドバイスや意見に耳を貸さない、受け取れない人が多いようです。今流行りの自粛警察にマスク警察、思い当たりませんか?

誰にでも『誰かに必要とされたい』という気持ちはあるものですが、メサイアコンプレックスの人は『自分には価値がない』という劣等感も持ち合わせているので“誰かに必要とされたい”という気持ちをより強く持っています。メサイアコンプレックスがあると、自分の存在を無条件に『意味がある』『価値がある』とは考えられません。そのため“誰かを助ける自分”“社会に貢献する自分”がなければ、自らに価値を見出せないので、より一層誰かに必要とされたいと強く思うのです。

ほとんどの人が何らかの人助けをした時に見返りを求めるもので、これはごく普通のことです。これは何も金銭物品のお礼という見返りではなく、「ありがとう、助かったよ」というひと言も、この場合、見返りになります。人助けをして、ありがとうと言われ気を悪くする人はいませんよね。

メサイアコンプレックスの人も人助けをした時に見返りを求めているのは同じなのですが、その見返りの“質”が違います。

人助けとは本来“相手を助ける”ことが目的です。見返りはあると嬉しい(喜んでもらえた、感謝してもらえた、ご飯をご馳走してもらえたなど含む)けど、なければ「残念だなぁ」程度ではないでしょうか。メサイアコンプレックスの人は“人助けをすることで自分を満たす”が目的ですから、自分が望む見返りがなけれは意味がないと考えます。そのため、メサイアコンプレックスの人は人助けをした後に見返りがないと過剰反応します。

お礼の言葉がなくても普通は「失礼な人だな」くらいで済むと思いますが、メサイアコンプレックスの人は「(あなたのために)こんなにやってあげたのにあり得ない!」という考えになってしまいます。人助けは同じでも、相手を助けることが目的、人助けをして自分を満たすのが目的・・・と、目的によって結果(お礼、見返り)に対する反応がまったく違うのです。

メサイアコンプレックスには、過去に劣等感を生む辛い体験や、生活環境があったことに間違いありませんが、身近にメサイアコンプレックスがいると、親切の押し売りや頼んでもいないのに勝手に暴走され、かなりウザいと感じるでしょう。

メサイアコンプレックスを持つ本人がメサイアコンプレックスの自分と向き合っていくのはもちろん大切なことですが、巻き込まれて不快な思いをしないために対処法を身につけたほうが良いこともあります。

メサイアコンプレックスは自分を必要としてくれる人を求めているので、心理的距離を取り、こちらから関わらないことが一番の対処法です。次に

「自分で考えて行動できるから大丈夫(助けはいらない)」

をはっきり主張することです。

「心配してくれてるから申し訳ない」「せっかく助けようとしてくれてるから」と思ってしまうアナタ、共依存にまっしぐらですよ。

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アスペルガーの持つこだわり〜パートナーを通して考える【後篇】

⚠︎:発達障害は先天的な脳の発達の偏りなので、親の躾や環境、また、本人のせいでもありません。発達障害をややこしくしているのは、無理解、無知からくる不適切な対応などでさまざまな神経症や精神疾患を併発したことによる二次障害といえます。

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

前篇では私のパートナーにおけるアスペルガーのこだわりを、私の視点で書いてみましたが、後篇ではアスペルガーであるパートナーから見た視点で、定型と言われる人々や、定型を基準に構成されている社会がどう見えているのか、『アスペルガー視点による定型』を聞き取ってみたので書いてみたいと思います。定型の人には耳が痛いことや辛辣な言葉もあると思います(笑)

——幼少期を振り返って、“何か違う”“なぜ、みんなそうなんだろう”と思ったことは?

幼少期より極度な人見知りだった。よく覚えているのは幼稚園児の頃は家以外のトイレには入れなかった。それは『行きたいけど行けない』ではなく、家のトイレ以外を『汚い』と感じていて強い抵抗感があり、我慢していた。幼稚園であれ学校であれ、当時の公衆トイレは和式が主流で、使い方に不慣れだったこともある。公衆トイレには和式・洋式問わず今でも抵抗感はあり、家まで我慢できるなら極力我慢している。
また、一人遊びが好きで(例えばミニカー。ここでも自分なりの規則性があり、無意識にそれに則って)いつも一人で遊んでいたが、母からは「友達と遊んできなさい」と言われて苦痛だったことを覚えている。親しい一部の人以外と関わるのが嫌だった。今思えば極度な人見知りも影響していたのかもしれない。中学生になるまで、俗に言う『おとなしい子供』で母が友達ができるか心配したほどだった。

——他者に言われて、頭ではわかるけど、自分にはどうにもこうにも納得できなかったことは?

日本人が重んじる協調性や同調圧力には納得がいかないことが多い。『察しろ文化』が苦手。見返りや貸し借りと感じることがある。組織においては、雑用などは新人や下の者がやるべき、ということが当然とされていることも納得がいかない。基本的には『気づいた人がやればいい』と思っている。それを頭ごなしに新人や下の者の役目、と言われたり強制されると『なんで?』と心の中で合理的理由を求めてしまう。

——社会に出るとさまざまな人と関わることが増えるが、どういった場面や部分で違和感があったり、理不尽と感じるか?

さっき言った、新人や下の者はこうあるべき、こうすべき、みたいなことは今でも理不尽だと感じている。大体において合理的理由を言ってくれることは、まずない。言ってくれて、その理由に納得しさえすれば素直に聞き入れられることもあるのに、言われないことのほうが多いから、理不尽と感じることも多くなる。なぜ合理的理由を言わないのか、いまだにわからない。それでも仕方なくやっていると、やる気がないだの、ちゃんとやれだのと文句を言われる。まったく理不尽だ。定型の思い上がりを感じるね(笑)

——他者と関わりを持つ中で、納得がいかないところはどんなライフハックを身につけてきたか?

ライフハックと言えるのかわからないが、就職してからは飲みに行くことで、自分一人で消化しづらい感情をリセットしていた。ただチェーン店の居酒屋で飲むことは絶対になかった。そういう所では消化どころか、逆に落ち込んだり怒りが募ってくるから、一人で行っても話せる飲み屋にこだわっていた。手っとり早いのはキャバクラとかクラブとか、オネーちゃんがいる店ね(笑)同時にバーを探していた。行きつけになれば一人で行ってもバーテンと話せるし、家でもない職場でもない第三の居場所になるかな、と思って。ライフハックという言葉は知らなかったから、当時はいい意味での『逃げ場所』という認識だった。今でもそうだが、自分にとってそういう飲み屋=再生ドック、と思っており、気持ちの重み、澱を軽くする場所になっている。

——定型と言われる人たちのどこが面倒、必要ないだろうと思うか?

言葉でちゃんと言わないくせに、ヘンな協調性を求めたり、気持ちにしろ、行動にしろ、こういうものだ、と勝手に決めつけ、無意識に押し付けてくるところがメチャクチャ面倒で迷惑。『オマエの価値観を押し付けるな』と思う。具体的には上手く言えないが、一度相手と根本的に文化が違うと思ってしまうと、話し合っても無駄だと思っている。それから、合理的ではないことを、合理的ではないとわかっていながら『そういうもんだから』と合理的にしないところは、非難を承知で、もはや『バカか』と思ってしまうね。
また、関心がない相手には聞かれたことには答えるけど、オレからは聞き返すことはないね。例えば、相手に「ご出身はどちらですか?」と聞かれれば「東京です」と答えても、「〇〇さんはどちらですか?」と聞き返さない。だから会話が続きにくい(笑)。場面によっては意識して聞き返すようにしているが、そういう時の後は尋常ではないぐらい疲れるね。『聞き返してほしいんだろうな』『聞き返したほうがいいんだろな』と思うことがもう面倒だし、そもそもこっちは答えたのだから、聞き返されなくても言え、と思う(笑)

——今まで他者に共通して何度か言われてきたこと、思い返すことはあるか?

何を考えているかわからない、地雷がわからない、ミステリアス、親からは難しい子、と言われている。急な予定変更や予定どおりにしてくれないことには怒りを覚える。定型の人もそうかもしれないが、筋が通らないことも嫌だし、そういう人は絶対に信用しない。ただちょっと違うのは、人を『性悪説』で見ているところが定型よりも徹底しているかもね。大体において言行一致であるかどうかをシビアに見ている。

——人間関係、恋愛遍歴の中で、今思うとアスペルガー特性が起因で衝突、スレ違いがあったエピソードは?

妹の披露宴の時。最初に記念撮影をするということで、予定の時間より10分前に会場に着いたのに、ホテルスタッフに「皆さんもう雛壇に整列されているのでお急ぎください」と到着早々言われ、反射的にブチギレた(笑)オレは遅刻していないのに、あたかも遅刻したかのような言い様だったから。しばらくして聞いたが、あの時はブチギレという言葉では済まない、それとは種類の違う、恐怖を抱く凄まじい激怒だったようだ。
それから、恋愛遍歴での衝突はない。アスペルガー特性がどうのこうのという域までいかないうちに終わってしまうか、終わらせてきたから。だから今までの恋人はオレがアスペルガーであったことは知らないと思う。オレ自身ここ2〜3年で自分がアスペルガーだと自覚したんだから(笑)
また、過去の失敗経験から『前は〇〇だったから』ということで、自分の中に“人間行動パターン”を持つ傾向がある。過去の失敗経験に似た場面だと思ったら徹底的に避けるし、そういう人がいたら必要最低限しか口をきかない、目も合わせないね。

——定型に対して思うことは?

もっとドライでいいと思う。美談と言われる話は辟易する。『愛は地球を救う』というテレビ番組、あれは鬱陶しいよね。あと『みんなと一緒』思考がまったくわからない。みんなと同じでないと不安になるという心理が理解できない。新卒一括採用で必死に就職活動している学生は滑稽にしか見えない。一社からも内定を得られず自殺する学生もいるらしいが、へぇー、ぐらいしか感じない。長い物に巻かれなければ上手く生きていけないのが定型社会だとしたら、オレみたいなアスペルガーはある意味最初からアウトロー、生きにくいわけだよね。だけど、そういう定型社会はもう限界に来ていると思うな。ダイバーシティとか多様性とか、ある部分で既存の定型社会では収まらない価値観が出てきているから。定型連中はそれに気づいて多様性とかダイバーシティとか言っているのか知らないけど、多分そんなことは考えずに流行りに乗って言ってるだけだろうな、実際、現場は多様性やダイバーシティなんて程遠いし、絵に描いた餅にしかなってないから。そもそも人は多種多様なんだから、今さら何言っちゃってるの?と思う・・・あのさぁ、定型ってバカなの?

——屈託のない笑顔で「定型ってバカなの?」という問いに思わず噴いてしまいました。決して彼は自分は頭がいいという意味で言っているのではなく、子供がするような、無垢な質問という感じでしょうか、車椅子の人を見て「あの人はなんで足がないの?」みたいな感じですかね(笑)

——私は(ド)定型だけど、定型に対して何か意識していることは?

そうだな、共感することかな。共感ポイントを見つけて意識的に共感するようにしている。腹の中では違うことを思っていても言葉や文字では“この場合、こう言った(書いた)ほうがいいんだろうな”と考え、パターン化している。(定型である)君を見ていて『もっと(言いたいことを強く)言えばいいのになぁ、ユルいなぁ』と思うことはある。オレから見て、そういうところは【定型障害】という定型ならではの障害なんじゃないか、と思ってしまう。あえて定型障害と表現すると、定型は一般的に「察することが善」を無条件で求め、当然のことと考えている、「“みんな”はこうしている」を当たり前に求め、それをやらない(できない)と調和を乱す異分子と受け取る傾向がある気がする。疑問があっても「みんなそうしている」という文系的な答えで合理的な答えが返ってこないのは【定型障害】の典型例だと思う。こういう中で生きていると、定型善、発達障害悪という風潮に「定型ナニ様?」と感じるね。そういうところ、定型も振り返って改善したほうがいいよ。自分達を障害と思ったことがないだろ、だからオレに【定型障害】とか言われちゃうんだよ(笑)

【定型障害】という造語には目からウロコというか、そういう視点はなかったなと思って、無意識に定型を基準に物事を考えていた自分にハッとしました。彼が「定型ナニ様?」と言うのもわかります。定型のほうがマジョリティな社会だから定型側を基準に考えがちですが、それ自体傲りで反省すべき点かもしれません。

パートナーはアスペルガーだから生きにくいと感じつつも、定型に合わせようとはせず(合わせる気がない)、場合によってはぶつかることも厭わない姿勢がここまで言えるのかな、とも思いました。どこか正々堂々としているというか、上手く言えませんが、アスペルガーだからといって卑屈ではないことは確かです。もし「どうしてそういうふうにいられるの?」と聞いたら、

「なんで定型に合わせる必要があるの?」

と、逆に聞いてくる姿が目に浮かびます(笑)

今月15日土曜日は夏季休業のため、コラムはお休みします。お盆明けは20日木曜日から掲載します。

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