メンタルヘルスと語彙力の関係

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

今回は標題のとおり、ちょっと違った視点で書きたいと思います。

「メンタルヘルスと語彙力なんて、関係あるの??」と思う人も多いのではないでしょうか。

私たちは日常的に日本語を使い、意思伝達/意思確認などをしながら生活を送っていますが、普段使っている表現や語彙はどのくらいあるでしょうか?改めて考えてみてください。

美味しくても「ヤバっ!美味しい!」、寒くても「ヤバい寒い!」、叱られたり注意を受けたら「ヤバ!怒られた」と、貧相な表現になっていませんか?もちろん友達同士で話す分には、それでも十分楽しく過ごすことができ、困ることはないと思います。

言語はコミュニケーションという形で他者と理解し合うためのツールであると同時に、自分の感情を視覚化するツールでもあります。

自分に責任はないのに理不尽なことで上司に(パートナーに、親に)叱られたとしましょう。語彙力がなければ「超ムカつく!」という表現しかできなくても、語彙力があれば「頭が真っ白になった後に、怒りの感情が沸々と湧き上がった」と“怒り”一つ取っても具体的に、自分の感情に一番近い表現ができます。

語彙力があることで、自分の気持ちや感情をより的確、詳細に表現でき伝えることができるということです。これはセルフモニタリングにも大いに役立ちます。

「子供が言うことを聞かなくてムカついた」

「子供が言うことを聞かなくて頭に血が上り我を忘れそうになった」

どちらがより詳細にその時の自分の怒り具合や気持ちを表しているかわかりますよね。

セルフモニタリングに情動ラベリングは感情マネジメント(アンガーマネジメントと言えます)に取り組む上で必須ですが、より細かく感情に目を向けていくために語彙力、表現力があるほうが“今の気持ち”、“その時の気持ち”に一番ピッタリくる言葉を探しやすくなるのです。

語彙力や表現力を増やしていきたいと思った時に取り掛かりやすいのは読書でしょう。興味がある分野、好きな作家、詩集など。ただハウツー本は、あまりお勧めしません。

心情を上手に歌い上げているアーティストもいますね。どっぷり歌詞にハマりながら聴くのもよいでしょう。

そして日記。

ほとんどの人は日記に“〜があった”とその日の出来事を記します。それだけでは日記ではなく備忘録です。一緒にその時の気持ちをなるべくたくさん書き出してみましょう。「ムカついた」「超ムカついた」「死ねばいいと思った」←これらだけではいけません(笑)

「怒りの感情で手が震えた」「手足が冷たくなるほどだった」「一瞬、時が止まったかのように感じた」「一瞬、何が起きたのかわからなかった」などでしょうか。小説は主人公の心情が書いてあるので、表現力の参考になりますね。

語彙力と表現力に自信が持てると、より一層他者とのコミュニケーションを楽しむこともできるかもしれません。ただ『ムカつく』だけでは、どの程度のムカつきなのか相手はわかりません。『そこまで傷つけてしまったのか』とまで思い至ることもなく、心の傷の度合いがわからず、無用な溝が広がっていきかねません。特に夫婦関係、恋人関係、親子関係、友人関係などプライベートでの関係の相手とは注意したいところです。

自分のために、そして他者との豊かなコミュニケーションのために、今一度“語彙力”に目を向けてみませんか。

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セルフモニタリングと認知【2】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

心理学におけるセルフモニタリングでは、主に思考(捉え方、受け取り方)/感情や行動を観察していきますが、今回は思考=認知(捉え方、受け取り方)について考えていきます。

①起こった出来事、感情が動いた場面。

②その時に浮かんだ思考/どう受け取ったか捉えたか。

③結果、どのような感情が生まれたか。

④どう行動したか。

この中で②を重点的に観察します。

②ではさまざまな場面で自身の“考え方や捉え方のクセ”が表れます。繰り返し繰り返し観察し、自分の思考や捉え方のクセを見つけます。「私にはそんなクセないよ」と思う人、観察が足りません(笑)

何度も繰り返す中で、自分の思考のクセが感情にどのように影響するのかも見えてきます。感情に悪影響を及ぼすようなら、その思考/捉え方に修正を加えることを検討し、思考/受け取り方・捉え方を変化させていきます。

今回は、強いエネルギーを持つ“怒り”の感情にフォーカスし、“感情”が生まれる前にどのような思考/捉え方のクセがあったのか、例を出しながら考えてみましょう。

「理不尽な目にあった」などはわかりやすく、自分の怒りに気づくことができますが、自分の感情を観察できていないと気づかずに怒っていることがあります。不快→(知らぬ間に)怒りになった場合などがそれに当たります。

理由もなくプンプンしている人はいないと思います。

わかりやすいところでは、足を踏まれた/ぶつかられた/悪口を言われたなどでしょう。日常的に起こりやすい場面だと、気遣ってもらえなかった、頼み事を聞いてもらえなかった、自分の意見に反対された、約束を破られた、無視された、わかってもえなかった、あたりでしょうか。

<例>

❶【出来事】
インフルエンザで体調が悪くて寝ているのに、パートナーが子供の世話や家事を何ひとつやってくれない。

❷【思考/捉え方】
見たらわかるんだから、フツーはやってくれるよね!?/こんな時くらい家事やるべき!(頭に浮かんだ思考)

❸【感情】
怒り。

これを

❷【思考/捉え方】 毎日遅いのに今日は自分がインフルエンザだから早く帰って来てくれた。

と思考を変化させると、

❸【感情】 あまり怒りは生まれない。

<例>

❶【出来事】
出張から戻ったら、何より先に自分に商談内容を伝えるように言ってあるのに、今日は顔を見せてもそれすらない。

❷【浮かんだ考え/思考】
何で約束を守らなんだ!仕事やる気あるのか?ダメなヤツだ!!

❸【感情】
イライラ!!怒り。

これを

❷【浮かんだ考え/思考】いつもは真っ先に報告に来るのに、今日に限って報告に来ないとは何かトラブルがあったのかもしれない。ひょっとしてその対応を先に考えていたのかも。

と捉え方を変えると、

❸【感情】モヤモヤはするが怒りは生まれない。

怒りの感情が湧き上がった時に、自分の思考の中に「〜べき」が隠れていないか観察してみてください。

これから年末年始に突入します。イライラしやすい時期ですが、怒らず穏やかに過ごしたいものですね。それではよいお年を。

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※本年のコラム掲載は本日25日で終了です。本年もお読みいただき、ありがとうございました。来年は1月10日水曜日から掲載し、その後は5の倍数日に掲載してまいります。来年もよろしくお願いいたします。

セルフモニタリングと認知【1】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

セルフモニタリング

心理学/精神科領域でよく使われる言葉ですが、最近はビジネスセミナーやコーチングでも頻繁に使われるようになってきたので、耳にしたことがある人も多いかもしれません。

人間関係はもちろん、日々さまざまなストレスに晒され心身が疲弊しがちな現代人。

ストレスコーピングをはじめ、さまざまな感情マネジメントやコミュニケーションスキルが求められます。

セルフモニタリングとはその名のとおり、“自分の状態を観察する”です。

例えば、

●寒気がして頭痛がする(風邪のひき始めかな?)→温かいものを食べて早めに寝よう。●明日午後イチ提出の資料が仕上がらない→●今日残業して、明日朝早めに出社して仕上げよう・・・のように、私たちは日常的にセルフモニタリングをし対応しています。自分の今の状態(状況)がわかっていることで対応できるわけです。

自分の身体状態、自分の置かれた状況を把握できるからこそ、適切な対応が取れるのです。

これはメンタルでも同じです。

自分の心の状態、今の感情、考え方や受け取り方のクセ、それらを把握しておく。

具体的には“怒り”を感じた時に怒りを治めるためにはまず、『自分は怒っているんだ』と感情に目に向けること。アンガーマネジメントはそこからスタートします。

考えのクセを直すには“自分にある考え方のクセ”や“思い込み”を理解し把握しておくことが大切です。

以前にも平たく言えば“考え方”“受け取り方”を認知という話をしました。認知は意識的に自分の感情に目を向けることで気づくことができます。人は案外、自分の考え方のクセには気づきにくいものなので、繰り返し繰り返し観察してみてください。そこに必ず考え方のクセや思い込みがあるはずです。

  • 「子供は親の言うことを聞くべきだ」
  • 「子供は親の言うことを聞かなくてはならない」
  • 「子供は親の言うことを聞くものだ」

どれも表現は違いますが、どこに考え方のクセや思い込みがあるかおわかりでしょうか。

次回は、実際に認知〜感情〜行動をモニタリングしながら、この3つがどのように影響し合い、また周囲に影響を及ぼすのかを分析し考えていきます。

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本年のコラムは12月25日月曜日までです。

セルフ認知再構成法にチャレンジしてみましょう【2】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

認知行動療法にはセルフモニタリングというスキルがあります。

セルフモニタリングは、感情マネジメント(アンガーコントロール/ストレスマネジメントなど)など、セルフコントロールを身につける上でベースとなる重要なスキルで、自分の今の状態を観察し、記録、評価することです。

自分自身の気持ちや行動を観察し整理していくことで、無意識にある考え方のクセを知ったり、自分をコントロールするヒント、問題解決の糸口が見えてきます。

コラム法は書き出していくことでセルフモニタリングスキルを身につけていく方法です。慣れるまでに多少時間はかかりますが、慣れるといちいち書き出さなくてもセルフモニタリングできるようになります(いつも幽体離脱した自分を少し離れたところから眺めてるイメージ)

コラム法で使うシート(私はノートに線を引いてお手製を使っていました)を思考記録表にして、3コラム法(1でお話ししました)、5コラム法、7コラム法をおこないます。

3から7に質問項目が増えるだけですが、いきなり7コラム法に取り組もうとすると面倒くさくて嫌になってしまうので、私は「気軽に3コラム法からスタートしましょう」と話しています。

(1)状況:気持ちが動揺したときの一場面(どんな嫌な事があったか)。
(2)気分:そのときの気持ち(どんな気持ち/感情になったか)。←数値化します。
(3)自動思考(その時に浮かんだ考え)。
──────ここまでが3コラム法

(4)根拠:自動思考を裏付ける具体的な事実。
(5)反証:自動思考と反対の事実。
──────ここまでが5コラム法

(6)適応的思考:バランスのよい考え。
(7)いまの気分。
──────ここまでやって7コラム法です。

最終回では具体例を出しながらお話ししようと思います。

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ひとり赤提灯:他者目線、どのくらい気になりますか?

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

最近増えたと感じるよく見かける電車内の風景の一つに、帰宅時間帯における【ひとり赤提灯】がいます。ひとり赤提灯とは、山手線や京浜東北線のようなロングシートの通勤電車内で、一人で缶酎ハイや缶ビールを飲んでいる人のことです。

首都圏でも都心から千葉、埼玉、神奈川など郊外方面に向かう電車内でよく見かけるようになりました。帰宅途中のサラリーマンが座って飲む、吊り革に掴まりスウィングしながら飲む、ドア近くで壁に寄り掛かりながら飲む・・・スタイルはいろいろです。

向かい合わせの4人掛けボックスシートで仲間同士ワイワイではなく、2列向かい合わせのロングシートの通勤電車で、とても静かにおとなしく飲んでいます。

酔っ払いが好きではない私は『お疲れさま。家まで遠いのかな、地元の居酒屋までもたなかったのかぁ』とは思います(笑)でも、やたらと声とリアクションの大きいオバサマ軍団、イチャイチャを通り越してもはや公然猥褻レベルのカップル、朝のスッピン乗車からの車内化粧に比べると不快感が少ないのはなぜでしょう(笑)

私も女性なので、1分でも多く寝ていたい朝のメイクの面倒さがわからないわけでもないのですが・・・。リップクリームを塗るくらいならまだしも、いくらなんでも土台から顔面を作り上げるのはやり過ぎに思えます。電車待ちをしながら、器用にホームでメイクしている女性も見かけました。降車する時は別人、ビフォー・アフターです(笑)

人前で恥ずかしげもなく他者を怒鳴り散らす人、車内化粧に熱心な女性、席を占領して寝ている酔っ払いのサラリーマン。走り回る子供を放置してベビーカーを並べておしゃべりに夢中なママたち。そして、やたらイキのいいオバサマたち。

自分に直接関係があり実際に面識のある人や、リアルでお付き合いがない人も多数混じるSNSでは“どう思われるか、見られるか”をとても気にするのに、一方で車内や通りすがりでは、他者にどう映るか気にもしない光景があります。そこは「だって遅刻しそうなんだから車内でメイクするしかないじゃん!」だったり「仲間といるとどうしても楽しくなっちゃって声が大きくなっちゃうのよ〜」「え?子供は元気なものでしょ?言ったって聞かないし、もう少しあたたかく見守ってくれてもいいのに」などなど、言い分はあるようです。

しかし、言動の一貫性の無さと厚顔無恥さの風潮に違和感を覚えるわけです。

セルフモニタリングは何も認知に限った話ではありません。迷惑をかける行為だけでなく、通りすがりの無関係な誰かを不快にさせてしまうかもしれないことに、もう少しだけ敏感になったら、世の中のモヤモヤやイライラが少なくなるのでは?と常日頃から思っています。

何も聖人君子であれ、と言っているわけではなく、

【他人は案外見ているものですよ、その姿】

を意識してみると、立ち居振る舞いが少し品がよくなるように思えるのです。