実行機能について【3】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

少し間が開いてしまいました(笑)

さて【2】に続き実行機能についてです。
長くなりましたがこの回で実行機能については終わりになります。

それでは実行機能の重要な要素の続きです。

時間管理
自分にある時間はどれくらいか、タスクに対しどのように割り振ればよいのか。〆切があるような課題や作業であれば、期限内に終了させるにはどうすればよいのか、など時間を見積もる力になります。

時間管理には時間感覚が関わり、メタ認知やワーキングメモリーも深く関係してきます。なぜメタ認知やワーキングメモリーが関わってくるのでしょうか。〆切のある書類や定期テスト、部屋の片付けで考えてみると、

ワーキングメモリーやメタ認知を使い、現状と自分の現状の能力を正しく理解(どうすれば理解できるのかを含めます)し、目標に対し必要な作業量や内容、その作業に要する時間を見積もらなくてはいけません。ほどんどの人はこれを無意識におこなっています。

この能力はマルチタスク(並列処理)でおこなわれるため、マルチタスクが苦手な人だと見積もりが甘くギリギリになったり、やたら忙しくなってしまったりが起こります。計画を立てスケジュールに沿って時間を守り実行するには、自分(の能力)や作業量を俯瞰する力(メタ認知)が不可欠になってくるのです。また、作業の進捗管理やズレの修正はメタ認知とワーキングメモリーを使いながら行っています。

認知の柔軟性
いきなり持ち上がった障壁や予定変更、失敗に直面した時に考え方や手段(やり方)を柔軟に変えられる能力になります。

柔軟性の低い人には完璧主義だったり、全か無か、白か黒か、0か100かのような極端な思考を持ちやすいのが特徴です。100点でなければ意味がない(0点と同じだ)、1位でないならどうでもいい、などです。

これには価値観を含め認知特性も関係してきます。

俯瞰力が弱く自分視点が強かったり、マイルールやこだわりが強いと認知に柔軟性を持ちにくくなります。

メタ認知
近年、学習やビジネスはもちろん、私生活においてもこのメタ認知という脳の機能の重要性が注目されています。さまざまな状況下で高次から(一歩下がる、上から見下ろすイメージ)自分を俯瞰する能力になります。今までの話の中で、実行機能に、メタ認知が深く関わることは十分理解できたと思います。

自分の言動や立ち居振る舞い、思考、感情を客観的に観察する力になりますが、発達障害の特性を持つ人は苦手な人が多いようです。

「女性はスイーツが好きだと思っているが、これは自分の経験やバイアスから来るもので、必ずしも当たってはいないことを知っている」「普通こう考えるよね、と思うが、その普通は自分にある思い込みや価値観の違いであることを知っている」のようなものです。

もう少し簡単な例だと「カレーを食べたいと思っている自分を自分はわかっている」みたいな感じでしょうか。俯瞰する力が弱いと「みんなそういうものだろう」と勝手に思い込んで思考を疑わず「自分は正しいはず」「正しくないまでも自分は間違ってはいない」という客観性に欠いた思考に傾きがちになります。

また、メタ認知が弱いと自己肯定感が低くなったり、反対に大した能力もないのに自己評価だけは高くなってしまうなど、ギャップを感じやすく生きづらさにも関係してきます。

マインドフルネスで「今ここ」「あるがまま」に意識を向け、感じる練習(瞑想)をしていくと、ストレス耐性を上げるだけではなくメタ認知を高めることも期待できます。

実行機能に必要な要素(能力)は多岐に亘ります。そのどれもが欠けても上手く機能しないので、簡単に“やる気”だけの問題ではないことがおわかりいただけたのではないでしょうか。

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実行機能について【2】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

実行機能について【1】では、実行機能の重要な要素として自動反応の制御、ワーキングメモリー、感情コントロールまでお話ししました。今回はその続きをお話しします。

実行機能の重要な要素・・・

●課題開始
先送りすることなく、予定どおりに課題を開始する力です。
計画立案、優先順位付け、感情コントロール、整理体系、メタ認知、時間管理などが課題開始には関わってきます。

わかりやすい例だと、先延ばし、後回しにしがちな行動のひとつが食器洗いではないでしょうか。面倒と感じやすい家事のひとつだと思います。そのため「面倒くさいな」という思考を制御できず、それに行動がコントロールされてしまいがちです。

ワーキングメモリーやメタ認知が機能していると、「先にやっておいたほうがいい」と気付けますし、感情コントロールができていれば「面倒くさいなぁ」と思っても、自分自身で「いやいや、そんなこと言ってないでさっさとやってしまおう」と自分にハッパをかけることができます。優先順位や目標設定がきちんとつけられて持続できていれば、「食べ終わったから、よし食器洗うぞ」となるでしょう。

●持続的注意
私たちの“注意”には4種類あり、それぞれ選択的注意、転換的注意、分配性注意、持続的注意と言います。一つのことに集中し続けることを持続的注意といいますが、飽きたり多少疲れても気が散らないように目の前の課題(タスク、やらなくてはならない作業)に注意を向け続けることでもあります。

勉強や資料作りなどで考えると理解しやすいと思います。最初に前記の課題開始が関わることがわかると思います。いざ開始しても、飽きてきたり退屈になると気が散りやすく集中できなくなります。反応制御やメタ認知、ワーキングメモリーが機能していないとすぐに気になることや目の前の違うこと、思いついたことに引っ張られ、そちらに意識が向いて集中が途切れてしまいます。同時に機能しているのが持続的注意(集中し続ける)になります。私たちは無意識に幾つもの注意機能を複雑に組み合わせながら課題遂行していることがわかると思います。

自分が勉強、作業などが持続できないのは、どの機能が弱いのかを考えてみましょう。課題開始?反応制御?メタ認知?持続的注意?・・・どの機能からくるものかで対策を取れるものもあります。

●計画立案・優先順位
なかなか複雑な機能で、課題解決のために取捨選択し目標達成に向け、手順ややり方を組み立てる能力になります。

簡単に思えますが、この優先順位をつける能力にはメタ認知(俯瞰して見る力)で今の状況を理解しながら、ワーキングメモリーで複数ある課題を検討することが必要になってきます。どのように進めるかの意思決定や計画立案には、タスクの整理や体系化もしなくてはなりません。さらに、計画立案には作業量の全体像を把握し(メタ認知フル活用)、課題遂行までのうんざりするモチベーションダダ下がりになりそうな感情をコントロールする力や、あちこちにある反応制御という注意の散りやすさを一時的に保留(隅に追いやり)、予定どおりにいかなかった場合の可能性を考え、対応できる柔軟性も必要になってきます。それに加え、同時に時間管理をおこなうことも必要になってくるでしょう。

●課題整理と体系化
インプットされた情報を整理してメモリーするシステム作りをし維持する力、と言われています。課題遂行でも発揮される能力ですが、わかりやすく説明すると、身の回りの整理整頓や脳内のさまざまな記憶を整理し必要時に必要な情報を思い出したり、インプットされた情報を保持することになります。

整理体系化を無駄なく効果的におこなうためにワーキングメモリーは必須で、俯瞰的な視点で考え理解し、また視点を切り替えていくためにはメタ認知や柔軟性も必要になってきます。うっかりや忘れ物は整理体系化だけではなく、私たちは無意識に常時、分配性注意やワーキングメモリーを働かせているので、忘れそうになった時にわざわざ注意しなくても思い出すことができるのです。うっかりや忘れ物が多い人はそのアラートが自動発動しない(しづらい)ので、能力をアテにせずトレーニングやライフハックでカバーしていくと生きづらさが軽減するのではないかと考えています。

【2】はここまでにして、【3】に続きます。

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メタ認知【2】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

メタ認知【2】では、メタ認知的技能についてお話します。

その前に、『認知』について少し触れておきましょう。

自己認知という言葉を聞いたことがありますか?自己認知とは、自分自身が自分の長所や短所、価値観を把握することを言います。臨床心理学や哲学では広く使われる言葉でもあります。

この自己認知、自分の強み弱みや価値観を知ることで、実は仕事にも関わりが出てくるのです。

【価値観】:これはとても抽象的な概念です。価値観を形成する要素はおおよそ100前後あるとされており、列挙した価値観に優先順位をつけていくことで自分が大切にしている価値観の優先度を知り、自分の価値観にマッチした仕事を選択することができます。

【長所(強み)短所(弱み)】:これもまた抽象的な概念です。ただ、大学で就職活動を始めると絶対に繰り返しやらされるのが“自己分析”で、あまり真面目に自己と向き合ってこなかったウェ〜イ♪な学生たちも、自己の長所短所をざっくりでも把握できるようになります。

自己認知と関係する用語に【他者認知】【対人認知】があります。心理学では他者認知を対人認知と呼びます。

自己認知が自分自身の価値観や長所短所を把握することに対し、対人認知は他者を把握するためにさまざまな情報に基づき、その心理や内面特性を把握しようと推測する行為、と言えます。

本題のメタ認知に入ります。

前回メタ認知には二つの種類があり、その一つであるメタ認知的知識についてお話しました。今回はもう一つの役割【メタ認知的技能】についてお話しようと思います。

認知についてどのような知識があるのかをメタ認知的知識というのに対し、認知を調整、制御する機能がメタ認知的技能になります。認知をコントロールするチカラと言えばわかりやすいでしょうか。

例を出しながらメタ認知的技能を説明していきましょう。

  • 自分は方向音痴だ(方向音痴であることを自分でわかっている←メタ認知的知識)。
  • 前もって入念にアクセス方法を調べ、時間よりかなり早めに到着できるようにする。←メタ認知的知識をもとにメタ認知的技能を使っています。

自分は忘れっぽいというメタ認知的知識が備わっていれば、対策としてメモやリマインダーを使うという対策を取ると思います。

この『自分は忘れっぽい』を自覚していること(わかっている)がメタ認知的知識、その対策にメモやリマインダーを使うこと、これがメタ認知的技能になります。

少しズレますが、パートナーに聞いたところ、なかなか面白い答えだったので載せておきます。

「自分は性悪説だ」←メタ認知的知識

「だから基本的に人は信じない」←メタ認知的技能

だそうです(笑)

案外自分のことは自分で思っているほどわからないものです。「私は思い込みが強くて他者の話を聞かないことがある」なんて、自分で認めたくないメタ認知的知識にはなかなか気付きませんし、気付こうとしないのが人という生き物です。メタ認知に目を向け、改めて自分を知ってみてはどうでしょうか。そうすれば気持ちがラクになることもあるかもしれません。

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メタ認知【1】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

お盆はいかがお過ごしでしたか?コロナ禍でもあるので、私は自宅でのんびりしていました。まぁ普通に生活していただけですね(笑)

さて本題です。メタ認知、聞いたことがある人もいるかもしれません。メタ認知はアメリカのフラベルという心理学者が提唱した概念で認知心理学用語ですが、その概念自体はとても古く、遡るとギリシャの哲学者ソクラテスにまで行き着きます。

「彼らは何も知らないのに知っていると思い込んでいる。だが私は何も知らないということを知っている。」

有名はソクラテスの言葉、“無知の知”です。知っている人も多いのではないでしょうか。ここからもソクラテスのメタ認知能力がとても高かったことが窺い知れます。

最近では認知心理学だけではなく、教育現場や組織でも広く【メタ認知の重要性/メタ認知を鍛える】など聞くようになりました。あまり拡げると訳がわからなくなるので今回は割愛しますが、

この【メタ認知】、実は人間関係やコミュニケーション能力とも深く関わりがあるのです。

イマイチわからないメタ認知だと思いますので、【1】【2】で理解していきましょう。

【メタ認知】
自分が認知していることを客観的に把握し、制御すること。→認知していることを認知する。

何やらますます何のことやら・・・?ですよね。限りなく平たく言うと、“自分の思考の矛盾に気付く”、“自分なりにやりやすいように方法を考え実践する”、“頭を整理するために書き出し視覚化する”などもメタ認知になります。

メタとは『より高次な』という意味で、メタ認知は自分自身を高い所から見ている自分、という感じでイメージしてみてください。メタ認知は概念で思考活動ですから体を動かしておこなう活動ではなく、語弊はありますが、思考の幽体離脱みたいな感じかもしれません(笑)

自分が認知している【感情】【思考】【学習】【記憶】などを高次な視点から俯瞰する、ということがメタ認知です。

メタ認知が高いと、自分自身の認知活動(感情/思考/学習/記憶)を客観的、冷静に見ることができ、それを見直したり調整することで高い目標設定〜達成する力(実行/遂行)や問題解決の向上に繋がるといった大きなメリットがあります。組織が求めるのはこの辺りの能力だと考えられます。もっと具体的に言えば、管理職や経営層になればなるほど、このメタ認知能力が求められる、と言ってもいいかもしれません。

“自分の思考について思考している”ような場面で発揮されている能力がメタ認知で、こうなるともうガッツリ哲学領域ですが・・・。

このメタ認知には二つの種類があり、それぞれ【メタ認知的知識】【メタ認知的技能】と呼びます。

【メタ認知的知識】
自分についてわかっていること → 自分は人見知りで初めて会う人と話すことや大勢の人の前は苦手だ、自分は短気で怒りっぽいところがあり、すぐに機嫌が悪くなる、自分は繊細過ぎて傷つきやすい、自分は無神経なところがあって意図しないのに人を不快にしてしまうところがあるようだ・・・などなど、自分を理解し自分について知っていること(自分は何者か、自分は何を知っているのか、知らないのか)です。

例を挙げると、『今、自分は怒っている』←怒っている自分をわかっている、あるいは『嫌な汗をかいている』←道に迷い、その焦りから嫌な汗をかいている自分をわかっている、などがわかりやすいでしょう。

難しい話が長くなってしまいましたので【1】はおしまいです。【2】ではメタ認知的技能についてスタートします。

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発達障害/思春期の面倒臭さや現状支援を息子を通して考える

⚠︎:発達障害は先天的な脳の発達の偏りなので、親の躾や環境、また、本人のせいでもありません。発達障害をややこしくしているのは、無理解、無知からくる不適切な対応などでさまざまな神経症や精神疾患を併発したことによる二次障害といえます。

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

発達障害は、早期療育(支援級通級、支援クラス)や青年期になってからもSST(ソーシャルスキルトレーニング)、自己理解やさまざまな工夫により生きづらさを軽減できる対策が取れる場合もありますが、生きづらさを薄めることができたとしても生涯にわたり抱えていく“特徴”や“特性”です。

当事者の生きづらさや困り感、また、関わりを持つ周りの戸惑いや困り感は、生涯にわたり同じ表れ方ではなく、学校、職場、家庭を持つなど、ライフステージの変化でかなり違った表れ方をします。

性差や環境によっても違いますし、二次障害を併発していると表面化した二次障害の症状にばかり目が向き、根底にあるかもしれない生きづらさの原因に発達障害が関わっているかもしれないことを見逃しています。

中学2年の息子を見ていくと、集団生活が始まる3〜4歳から小学校2年生までは、“やたらミニカーを並べる”“数字に対するこだわり”“電車に対する興味”や、言語明瞭意味不明瞭と、私の感じる違和感以外、特筆すべき問題はなく、人見知りゼロ、友達関係良好、成績優秀、生活に影響あるこだわりなし、メンタル安定、生活習慣問題なしでした。

小学校3年生以降、徐々に特徴が目立つようになり、次々と特性が表面化、同時に友達関係が拗れやすくなっていきます。相変わらず成績は優秀でしたし、すべてに積極性があることから、私がさまざまなエピソードで訴えても、児童精神科に育児観察日誌を持ち駆け込むまで、遅れや何らかの障害を一度も疑われることなく、「お母さんの気にし過ぎ」「もっとおおらかに見てあげないと」と、まるで私が神経質で育児ノイローゼ気味かのように(笑)、取り合ってもらえませんでした。

小学校では提出物も少なく、低学年では何かと保護者を巻き込み確認していくプリントなどが多いのですが、学年が進み持ち物や提出物の準備、管理を自己責任で負っていく高学年〜中学生になると、小学校とは比べ物にならないくらいあちこちに困り感が増していきます。

提出物の期限が守れない→忘れやすいこと、気が進まないことを先延ばしする、「ま、いっか、なんとかなるだろう」と軽く他人事のように考えるADHD特性があらゆる場面で爆増。時間の逆算ができなかったり、時間感覚が現実と違うので、「まだ大丈夫」とのんびりまったりしてしまい、出かける寸前で慌てる、遅刻する・・・が激増。

提出物を提出しないので評価が悪くなり、テストで点数が良くても成績はダダ下がりますし、忘れ物も改善されないので、テスト以外の評価もやはり下がり気味です。“計画を立て遂行する機能”が弱いので、復習やコツコツとテスト勉強をするのは難しくなります。見ていて気付くのは、遂行/実行機能が弱くても、計画を立てることは何故か好きで、やたら綿密に細かく予定を立てます。ですが、実行機能に弱さがあるのがADHDなので、結局は“予定立てただけ”に終わります。また、やたらと高くに目標設定するクセもあるため、ここでもメタ認知(認知を認知する力)の弱さを感じます。

本人は“できる”と思って頑張るつもりで予定を立てているので、できない予定を立てているつもりはありません。

人間関係では、思い込みの強さや、他者の考えや気持ち、意見を聞いて柔軟に自分の認知や思考に修正を加えることが苦手で、独特の認知からくるコミュニケーションスタイルや、メタ認知の弱さ、共感力の低さというASDの特性から躓きが起こり、拗れを生みやすくなっていきました。

【思ったことをそのまま口に出して他者を不快にしたり傷つけてしまう】は、ASDにもADHDにもあることですが、人間関係に躓きが起きる原因では、どちらの特性が強めに表れているのかで対策が変わってきます。

息子のように重複だと複雑なのですが、ADHDの特性として強く表れると、

▶︎思い付いたこと、思い出したこと、話をしていて引っ掛かった(気になった)キーワードから「今すぐ話したい」という気持ちが抑えられなくなり、他者を不快、怒らせてしまう言い方を“わかっているのに”話したい気持ちを我慢できずそのまま衝動的に口に出してしまいます。

ASDの特性として強く表れると、

▶︎共感力とメタ認知が弱く「今これを言うと場にそぐわないかも」「この言い方だと傷つけてしまうかもしれない」「この人に失礼にあたるだろうな」を考えられません。もちろん、パターン化して学習していく力はあるので、上手く「こういう場ではこう言うのが正解だろう」と学ぶと、よほどパターンが違わなければそれなりにやっていけるようになります。

「思ったことは何でも(他者感情を考慮できず)口に出す」素直さが、時として他者を愕然とさせたり、周りを凍りつかせることになるのですが、本人は「間違ったことは言っていないんだけど」と思っているケースが多く、何故指摘されたり叱られるのかわからず、理不尽を感じて不満を募らせていきます。

他者の見えない感情や思考まで考えて、相手のことを慮ったタイミングや言葉を選びましょう・・・は、とても難しいものですし、「何故そんなことまで考えて話さなきゃいけないの?」とも思うのでしょう。

人間は言語を意思疎通のコミュニケーションツールとして使い(仕草や視線、表情などノンバーバルコミュニケーション含む)、そこに共感(と感じる)や寄り添い(と感じる)を感じ取ることで、親しみを持ったり信頼を築く土台になっていくものです。言いたいことを思ったまま口に出すことを一概にいけないこととは言いませんが、『自分勝手』『思いやりがない』『ワガママ』と誤解を受けやすくなるので、社会生活をする上で自分にとってはプラスに働きません。

小学校6年生から今も通級に通う思春期真っ只中の息子は、定型思春期でも面倒臭いのに、発達障害のややこしさがプラスされてなかなか一筋にはいきません。

家庭ではまだまだ課題山積のように見えても、あれほど学校生活で問題が起きていたことが中学2年になるとメッキリ減りました。本人の成長があるのはもちろんですが(発達障害は発達しないのではなく、発達がゆっくり、言えます)、通級という形で個別指導を何年も受けていることも他なりません。

ASDでは特に弱いさまざまな認知機能やコミュニケーション(アサーションにも取り組んでいます)、ADHDでは思考の整理の仕方や忘れ物対策というライフハックを個別指導してもらっています。

発達障害がなくても大変な思春期、発達障害があると思春期はかなり大変です。二次障害を併発してしまうのも多くはこの時期です。

ようやく思春期の大きな山を一つ越えたところですが、まだ次の険しい山が見えています。特別支援を受けられるのはほとんど中学3年、つまり義務教育まで。中学校卒業まで残り1年と少し。どんなにぶつかり合っても、丁寧にしっかり息子に寄り添いながら、家庭療育にも取り組んでいきたいものです。

11月25日水曜日はコラム掲載日ですが、所用のため休載します。次回掲載は11月30日月曜日です。よろしくお願いします。

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