実行機能について【3】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

少し間が開いてしまいました(笑)

さて【2】に続き実行機能についてです。
長くなりましたがこの回で実行機能については終わりになります。

それでは実行機能の重要な要素の続きです。

時間管理
自分にある時間はどれくらいか、タスクに対しどのように割り振ればよいのか。〆切があるような課題や作業であれば、期限内に終了させるにはどうすればよいのか、など時間を見積もる力になります。

時間管理には時間感覚が関わり、メタ認知やワーキングメモリーも深く関係してきます。なぜメタ認知やワーキングメモリーが関わってくるのでしょうか。〆切のある書類や定期テスト、部屋の片付けで考えてみると、

ワーキングメモリーやメタ認知を使い、現状と自分の現状の能力を正しく理解(どうすれば理解できるのかを含めます)し、目標に対し必要な作業量や内容、その作業に要する時間を見積もらなくてはいけません。ほどんどの人はこれを無意識におこなっています。

この能力はマルチタスク(並列処理)でおこなわれるため、マルチタスクが苦手な人だと見積もりが甘くギリギリになったり、やたら忙しくなってしまったりが起こります。計画を立てスケジュールに沿って時間を守り実行するには、自分(の能力)や作業量を俯瞰する力(メタ認知)が不可欠になってくるのです。また、作業の進捗管理やズレの修正はメタ認知とワーキングメモリーを使いながら行っています。

認知の柔軟性
いきなり持ち上がった障壁や予定変更、失敗に直面した時に考え方や手段(やり方)を柔軟に変えられる能力になります。

柔軟性の低い人には完璧主義だったり、全か無か、白か黒か、0か100かのような極端な思考を持ちやすいのが特徴です。100点でなければ意味がない(0点と同じだ)、1位でないならどうでもいい、などです。

これには価値観を含め認知特性も関係してきます。

俯瞰力が弱く自分視点が強かったり、マイルールやこだわりが強いと認知に柔軟性を持ちにくくなります。

メタ認知
近年、学習やビジネスはもちろん、私生活においてもこのメタ認知という脳の機能の重要性が注目されています。さまざまな状況下で高次から(一歩下がる、上から見下ろすイメージ)自分を俯瞰する能力になります。今までの話の中で、実行機能に、メタ認知が深く関わることは十分理解できたと思います。

自分の言動や立ち居振る舞い、思考、感情を客観的に観察する力になりますが、発達障害の特性を持つ人は苦手な人が多いようです。

「女性はスイーツが好きだと思っているが、これは自分の経験やバイアスから来るもので、必ずしも当たってはいないことを知っている」「普通こう考えるよね、と思うが、その普通は自分にある思い込みや価値観の違いであることを知っている」のようなものです。

もう少し簡単な例だと「カレーを食べたいと思っている自分を自分はわかっている」みたいな感じでしょうか。俯瞰する力が弱いと「みんなそういうものだろう」と勝手に思い込んで思考を疑わず「自分は正しいはず」「正しくないまでも自分は間違ってはいない」という客観性に欠いた思考に傾きがちになります。

また、メタ認知が弱いと自己肯定感が低くなったり、反対に大した能力もないのに自己評価だけは高くなってしまうなど、ギャップを感じやすく生きづらさにも関係してきます。

マインドフルネスで「今ここ」「あるがまま」に意識を向け、感じる練習(瞑想)をしていくと、ストレス耐性を上げるだけではなくメタ認知を高めることも期待できます。

実行機能に必要な要素(能力)は多岐に亘ります。そのどれもが欠けても上手く機能しないので、簡単に“やる気”だけの問題ではないことがおわかりいただけたのではないでしょうか。

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実行機能について【2】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

実行機能について【1】では、実行機能の重要な要素として自動反応の制御、ワーキングメモリー、感情コントロールまでお話ししました。今回はその続きをお話しします。

実行機能の重要な要素・・・

●課題開始
先送りすることなく、予定どおりに課題を開始する力です。
計画立案、優先順位付け、感情コントロール、整理体系、メタ認知、時間管理などが課題開始には関わってきます。

わかりやすい例だと、先延ばし、後回しにしがちな行動のひとつが食器洗いではないでしょうか。面倒と感じやすい家事のひとつだと思います。そのため「面倒くさいな」という思考を制御できず、それに行動がコントロールされてしまいがちです。

ワーキングメモリーやメタ認知が機能していると、「先にやっておいたほうがいい」と気付けますし、感情コントロールができていれば「面倒くさいなぁ」と思っても、自分自身で「いやいや、そんなこと言ってないでさっさとやってしまおう」と自分にハッパをかけることができます。優先順位や目標設定がきちんとつけられて持続できていれば、「食べ終わったから、よし食器洗うぞ」となるでしょう。

●持続的注意
私たちの“注意”には4種類あり、それぞれ選択的注意、転換的注意、分配性注意、持続的注意と言います。一つのことに集中し続けることを持続的注意といいますが、飽きたり多少疲れても気が散らないように目の前の課題(タスク、やらなくてはならない作業)に注意を向け続けることでもあります。

勉強や資料作りなどで考えると理解しやすいと思います。最初に前記の課題開始が関わることがわかると思います。いざ開始しても、飽きてきたり退屈になると気が散りやすく集中できなくなります。反応制御やメタ認知、ワーキングメモリーが機能していないとすぐに気になることや目の前の違うこと、思いついたことに引っ張られ、そちらに意識が向いて集中が途切れてしまいます。同時に機能しているのが持続的注意(集中し続ける)になります。私たちは無意識に幾つもの注意機能を複雑に組み合わせながら課題遂行していることがわかると思います。

自分が勉強、作業などが持続できないのは、どの機能が弱いのかを考えてみましょう。課題開始?反応制御?メタ認知?持続的注意?・・・どの機能からくるものかで対策を取れるものもあります。

●計画立案・優先順位
なかなか複雑な機能で、課題解決のために取捨選択し目標達成に向け、手順ややり方を組み立てる能力になります。

簡単に思えますが、この優先順位をつける能力にはメタ認知(俯瞰して見る力)で今の状況を理解しながら、ワーキングメモリーで複数ある課題を検討することが必要になってきます。どのように進めるかの意思決定や計画立案には、タスクの整理や体系化もしなくてはなりません。さらに、計画立案には作業量の全体像を把握し(メタ認知フル活用)、課題遂行までのうんざりするモチベーションダダ下がりになりそうな感情をコントロールする力や、あちこちにある反応制御という注意の散りやすさを一時的に保留(隅に追いやり)、予定どおりにいかなかった場合の可能性を考え、対応できる柔軟性も必要になってきます。それに加え、同時に時間管理をおこなうことも必要になってくるでしょう。

●課題整理と体系化
インプットされた情報を整理してメモリーするシステム作りをし維持する力、と言われています。課題遂行でも発揮される能力ですが、わかりやすく説明すると、身の回りの整理整頓や脳内のさまざまな記憶を整理し必要時に必要な情報を思い出したり、インプットされた情報を保持することになります。

整理体系化を無駄なく効果的におこなうためにワーキングメモリーは必須で、俯瞰的な視点で考え理解し、また視点を切り替えていくためにはメタ認知や柔軟性も必要になってきます。うっかりや忘れ物は整理体系化だけではなく、私たちは無意識に常時、分配性注意やワーキングメモリーを働かせているので、忘れそうになった時にわざわざ注意しなくても思い出すことができるのです。うっかりや忘れ物が多い人はそのアラートが自動発動しない(しづらい)ので、能力をアテにせずトレーニングやライフハックでカバーしていくと生きづらさが軽減するのではないかと考えています。

【2】はここまでにして、【3】に続きます。

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実行機能について【1】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

【実行機能】

実行機能とは私たちの日常生活に欠かすことのできない認知/行動機能のうちの一つで、目的(課題/作業)を遂行達成するために“思考/感情/行動”を自身で制御、抑制する機能のことで、そこには時間管理や感情コントロールなども含まれます。謂わば、“脳の管制塔”としての役割を果たしていると言えます。実行機能に弱さがあると、社会生活のさまざまな場面で困り感が表れます。

簡単なところでいえば、「部屋の片付けをするのに段取りを考える」「いくつかある作業を優先順位をつけ進める」なども実行機能に関わってきます。

実行機能には重要な要素がいつくかありますので、ひとつずつ細かく見ていきましょう。

●自動反応の制御
自分の認知行動を俯瞰する力であるメタ認知や、マルチタスクを可能にするワーキングメモリーと組み合わされて、状況に応じ不適切な振る舞いをコントロールします。反応抑制で衝動をコントロールできると、その後どのような行動が適切かを考えるための余裕が生まれます。
●ワーキングメモリー
ワーキングメモリーは作業を同時並行処理するために記憶/情報を一時保持しておく能力で、この力が弱ければ作業の抜け落ちやケアレスミスが多くなりますし、効率よく作業を進めることが難しくなります。料理や部屋の片付けはもちろんですが、実は読書もワーキングメモリーをフル活用させる作業です。

目に入ってきた文字を言葉や文章として理解するプロセスでは、入力されたそれらの情報を一旦受け止め、プールしておく必要があります。また、登場人物の特徴、登場場面などは映像として想像しているはずです。記憶/情報をただ記憶しているだけではストーリーを理解できませんので、持続的注意(注意についてのコラム参照※)を使い読書に集中し、読み進めると次々に入ってくる情報を単語から意味を理解しながら脳内でストーリーを思い描いていく情報処理をおこなっていきます。読書では想像映像、言語的視覚的情報を維持しながら知覚も働かせ意味を理解していく処理が並行しておこなわれるため、その作業をする脳の作業台がワーキングメモリーになります。

※注意についての参照コラム:注意機能【1】 注意機能【2】

●感情コントロール
課題遂行、目標達成、自己行動管理のために感情をコントロールする力になります。感情をコントロールするためには、自分の感情に気付く必要があり、そのためのベースとなるのがメタ認知になります。思考やさまざまな注意に柔軟さを持ち、切り替えることができないと感情的に混乱しやすくなり、感情コントロールは困難になります。感情コントロール(アンガーマネジメントだけではありません)ができないと、課題開始、計画立案と優先順位付け、整理と体系化、持続的注意、目標へのモチベーション、時間管理などさまざまな行動に影響を与えます。思ってもみない事態に気が動転し、オタオタして頭が真っ白になってしまう人は、感情コントロールにも目を向けてみるといいと思います。

【2】でも引き続き重要な要素についてお話しします。

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ADHDについて【番外編】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

番外編として、ADHD に起こる特性とその理由、本人の工夫/周囲の人ができる配慮などをお話しして終わりにします。

●忘れ物やケアレスミスが多い
<理由>
ワーキングメモリの弱さがあるため、“今のタスクを忘れないようにしながら(記憶の一時保持)”他の作業をすることが難しい。

<本人の工夫>
本人は「大丈夫、覚えていられる」と思っていても実際は難しいので、頑張って頭で覚えておこうとせず、メモ帳(アナログですが)や、スマホのリマインダー、スケジュール、アラーム、メモ機能などをフル活用する。

<周囲の配慮>
周囲の人は、作業中に追加指示を与えないこと(今やっている作業に戻れなくなったり抜け落ちる)、作業の区切り目に声をかけ確認する。
●〆切期日を守れない、計画どおりに実行できない
<理由>
衝動性からタスク終了までの時間の見積りが甘く作業に入ってしまう、興味関心が移りやすいので、今やっている目の前の作業が終わらなくても気になることに手をつけてしまう。ワーキングメモリの弱さから〆切期日を意識しながら複数作業ができない(あれこれ手をつけ、どれも中途半端)。

<周囲の配慮>
作業前に周囲の人が客観的に時間の見積りをし作業量を調整する。本人の意思だけで目の前の作業に集中し続けることは難しいので、周囲の人が随時声がけをしながら進捗状況を確認し、今やるべきことに集中するようサポートする。
●落ち着きがない
<理由>
衝動性から興味関心に引っ張られ、思いついたら状況判断(優先順位や作業分量など)をせず、行動してしまう。

<本人の工夫>
脳の覚醒が低いことも原因とされているので、落ち着かせようとすることが余計に脳の覚醒を下げ、より行動のブレーキが効きづらくなる恐れがあるため、多少の変化がある状況を作り出せる環境を用意する。本人は周囲に迷惑をかけない範囲で時分に刺激を与え(貧乏ゆすりやペン回しなど)、覚醒を促せる方法をいくつか考えておく。
●約束や予定を忘れる
<理由>
ワーキングメモリの弱さから、予定が記憶に定着する前に他の情報が入ってくることで混乱や抜け落ちが生じ、最初の情報(約束や予定)を忘れてしまう。

<本人の工夫>
ケアレスミスと同じように頑張って覚えるのではなく、メモやスマホのさまざまな機能を活用する。

<周囲の配慮>
周囲の人は「覚えているだろう」と期待し過ぎず(忘れてるかもな、と考える)、予定などは適宜確認する。
●自分にとって重要なことでも話を聞き続けたり、資料を読み続ける(勉強なども含む)ことが苦手
<理由>
自己抑制の効かなさがある衝動性から、他の情報に注意や目が向くと意識あ引っ張られてしまう。また、ワーキングメモリの弱さから記憶しておける情報量が少ないので、読み続けたり話を聞き続けたりすると脳で情報処理できなくなる。

<本人の工夫>
本人も周りもこまめに休憩を入れることを心がける(20〜30分に一度)。休憩時間に自分のペースで情報を整理したり、脳内を一旦リセットする。

<周囲の配慮>
周囲の人はADHDの特性を理解し、焦らせない、一度に多くの情報を与え過ぎないよう留意し、本人のペースを尊重する。
●遅刻を繰り返す
<理由>
ワーキングメモリの弱さから、予定の時間に合わせて行動したり、注意の配分(時間の見積り)やマルチタスクが困難。出かける前に「洗濯物を干す」「読みかけの本を読む」など別の作業を始めてしまうと時間に意識が向かなくなり、気づいた時には間に合わない時間になっている。衝動性と注意の切り替えも上手くいかないので、他の作業を始めてしまうと中断することが難しい。

<本人の工夫>
特性として、作業に没頭(興味があることへの過集中)すると、時間意識がスッポリ抜け落ち、作業時間も最小で見積りがち。不注意や衝動性を自分一人でコントロールすることは難しいので、遅刻せずに行動できた時の手順をパターン化してルーティン化する。

<周囲の配慮>
成功パターンのルーティン化に力を貸しサポートしていく。
●部屋の整理やモノを探すことが苦手
<理由>
ワーキングメモリや転換的注意の弱さ、過集中、空間把握能力の低さなどの特性から部屋の片付けやモノを探すことが苦手。片付けていても雑誌やアルバムなど他のことに注意が移ってしまう。転換的注意とは作業を切り替える力と考えるとわかりやすい。また、何をどう片付けてよいのかわからない場合もある。ADHDがあると、本人は覚えているつもりで「とりあえず置いておこう(後で片付けよう、後で捨てよう)」も多いので、それが部屋中(家中、引き出し中)で起こると、もうどこから手をつければよいのかわからなくなる。面倒なこと(気が向かない)は後回しにしてしまう特性や優先順位をつけることにも苦手があることから、片付け始めてもなかなか片付かないということが起こりやすくなる。

<本人の工夫>
モノの住所(置き場所/鍵などは動線を考えて玄関近くに置くなど)を決めたり、不必要なものを買わない(モノを増やさない/あれば便利なものは必要ないものと知りましょう)、モノを平積みせず立てて収納する、視覚化するために透明ケースを活用するなど。ADHDの人の片付け術は、巷に溢れる“〜お片付け術”やおしゃれ収納にはマッチしないことがほとんど。さまざまな特性を理解している専門家などに相談しながら自分に合った方法を一緒に考えてもらいましょう。
●思いついたことをそのまま口に出して他者を怒らせたり、周囲をドン引かせてしまう
<理由>
衝動性から深く考えずすぐ口に出してしまう(これは言っていいことかどうか判断する前にもう口に出してしまっている)。

<本人の工夫>
口に出してしまったものはどうしようもないので、相手を不快にさせてしまったら言い訳したり取り繕おうとせず、すぐに謝罪する習慣を身につけることや、自分の特性に「衝動性があるから、思ったことを口に出す前に少し考えなきゃ」と自覚することも大切。「あっ!マズい!」と思った途端、脳内パニックになって謝罪することを忘れてしまう、もよくあること。

生活に支障が出やすい自分の特性にはどんなことがあるのか、ジャッジせずに受け止め、対策を考えていくことが生きづらさの軽減に繋がります。「できない」「やっぱり自分はダメなんだ」と落ち込まないでください。自分に合った“やり方”がありますし、工夫をすることで対策が取れることもたくさんあります。

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ADHDについて【2】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

【1】でADHDが後回し・先送りしてしまうのは報酬系機能の弱さからくると書きました。また、それが報酬系機能の弱さからだけでもないとも書きました。

今やるべきこと(その時やらなくてはならないこと)ではなく、違う行動を優先してしまう理由には、特性からくる衝動性も関係してきます。

本人は「やらなくてはいけないこと」を理解していても、自分がやりたいこと(興味関心のあることや目についた気になること)をしたい衝動を我慢できない、ということです。

例えば、テスト前だから勉強しなきゃ、明日のプレゼン資料を見直ししてくるように言われたからやらなきゃ、などなどの状況であっても自分の“やりたい”を優先してしまうのです。

毎日息子を見ていると、よーくわかります(笑)

ADHDには実行機能(計画立案、それを実行するために段取る力)にも弱さがあることから、報酬系機能の弱さ/衝動性/実行機能の弱さ/ワーキングメモリーの弱さ、が複雑に関わっています。ワーキングメモリーが少ないと、やらなくてはいけないことが目の前にあっても、他の刺激(片づけしている最中に見つけたマンガ、勉強中に目の前に置いたスマホ)で注意が逸れ、結果やらなくてはいけないことが後回しになってしまいます。

後回し・先送りだけでもこれだけの特性が関係してきますから、タスク遂行しなくてはならないことが目の前にあっても、特性の掛け合わせから自分の努力だけで抗うのが相当難しいことがわかります。

ADHDによく見られる特徴は他にも、

  • 忘れ物、失くし物が多い。
  • ケアレスミスが多い。
  • 落ち着きがない。
  • 人の話しに被せる(話しを最後まで聞けない)。
  • 同じ資料や勉強を続けられない。
  • 部屋の片付け、物を探すことが苦手。
  • 計画は立てられても予定どおりに進めたり、期日〆切を守れない。
  • 思ったことを後先考えずに口に出す。
  • 約束や予定を忘れる。
  • 遅刻を繰り返す。
  • 計画性がなく衝動買いをする。
  • 大事な場面で眠くなる、寝てしまう。

などがあります。

番外編では、なぜそのようなことが起こるのかを脳機能から、また、自分の周りができる工夫や対策などに軽く触れてADHDについてを終わりにしたいと思います。

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ADHDについて【1】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

ASDについて深掘りする機会が多かったので、今回から2回にわたりADHDについて深掘りしていきたいと思います。

ADHDと聞いて私生活/社会生活において困り感が出やすい特性の筆頭に、後回し・先送り癖があります。もちろんADHDでなくても、程度の差こそあれ気が進まないことに対して、誰でも先延ばししてしまうことはあります。

しかし、報酬系機能の弱さからくるADHDの先送り癖は、そうではない人の先送りとはまったく違うと言えます。

有名な報酬系機能の実験にマシュマロテストというものがあります。マシュマロではなくチョコレートでも飴でも構いません。

子供に「目の前にあるチョコレートを15分我慢したらチョコレートを2個あげます。でも、15分待てなかったらチョコレートは1個だけです」と話し、先の大きな報酬(長期的報酬/この場合15分待てたらチョコレート2個)のために、今すぐの報酬(短期的報酬/この場合今もらえるチョコレート1個)を我慢できるかどうかを観ます。

報酬系機能が弱い子供は我慢できずに食べてしまうんですね。

報酬系機能は満足感や達成感を司る神経系なのですが、ADHDの特性から目の前の報酬(チョコレート1個)に飛びつき、長期的報酬(15分後のチョコレート2個)のための我慢ができません。

わかりやすく言うと、欲に忠実とでも言うのでしょうか(笑)当事者の話でも聞きますし、我が子を見ていても非常によくわかります。

ただ、先延ばし・後回し癖は何も報酬系機能の弱さからくるものだけではありません。

ワーキングメモリーの低さや衝動性も関わってくると「これ終わったらアレしよう」と思っていても、あちこちに情報があるとそれが刺激となり、注意が逸れたり(集中できない)、興味関心にグイグイ引っ張られて、そもそも何をしようとしていたかを忘れます。

ワーキングメモリーは脳内にある“情報を載せておくお盆”をイメージしてみるとわかりやすいと思います。

そのお盆が小さいと情報(例えばハサミ/洗濯物をしまうなど)をひとつ載せたらお盆はいっぱいになり、他の情報(提出予定の書類/回覧板を回すなど)は載せきれず、情報の上に重ねて置く(重なって下になってしまった情報はなくなったと感じ見つけられなくなるか忘れる)になってしまいます。下になったタスク自体が忘れ去られてしまうので、結果“先延ばし”になってしまうのです。この点がADHDではない人の先送りとはまったく違う点だと言えます。

次回【2】ではADHDの先延ばし癖を衝動性や実行機能から見ていきます。

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息子のWAISを取ってみました【2】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

前回の続きで、ワーキングメモリーの説明からスタートします。

ワーキングメモリー(WM)
聴覚情報を一時的に保持したり、その情報を元に考えたりアウトプットする能力
実行機能の凸凹を表している指標でもあるため、ADHDやLDでは特徴が表れやすくなります。この指標が低いと、話の途中で何を話していたのかわからなくなったり、本を読んでいても内容がわかならくなるなどが起こります。ワーキングメモリーに課題があると生きづらさを感じやすい場面が増えることが予想されます。

息子の苦手さはこのWMとPSI(処理速度:この後に説明します)に顕著に表れているのですが、WMの弱さがあるとどのようなことが起きるのか?

学校や職場で与えられる指示は一度に一つずつとは限りません。WMが弱いと記憶の一時保持に苦手が出るので「次の時間は理科です、画版を片付け一旦教室に戻って教科書、ノートを持ち、理科室に集合してください」などいくつもの指示が含まれるものは、入ったそばから抜け落ちます。残るのは「理科室に集合してください」になるわけです。学校の場合、周りの生徒の動きを見ながら行動できるので、ワンテンポ遅れることはあっても何となくできてしまい、本人も周りも気付かない、できているように見えることもあります。学校生活で一斉指示が入りにくいのはWMの低さからくる場合もあるのです。息子も小学生のうちは一斉指示+息子個人に対し、一つずつ個別指示してもらっていました。

しかし、社会人になるとそうもいかないので、いきなり“できない人”、“話を聞いてない人”になってしまいます。発達障害特性がある人はWMが低い人が多いので、「指示は一つずつ」が鉄則です。

処理速度(PSI)
単純作業を正確に早くおこなう能力
計算、見て覚えたことを素早く書き出す、示された図を数ある中から早く正確に探し出す、などになります。

いわゆる作業能力で、情報処理のスピードと言うとわかりやすいでしょうか。PSIが低いと、集中が続かず作業効率が悪く、一度覚えた作業(学習)でも遅くなります。スピードを求めるとかえってミスが増えるという悪循環に陥ります。

この指標に弱さがある子供にスピードで競わせるドリルや100マス計算はキツイです。社会人では急いで資料をまとめるなどにミスが増えやすくなるので「ゆっくりでもいいから丁寧に」になると思います。

自分の得手不得手がわかると苦手なことに対策を立てやすくなります。「みんなと同じことができないなんて自分は劣っている・・・」などと自己肯定感がダダ下がる前に、一度WAISやWISCを取り、自分の特性を客観的に知るとよいかもしれません。

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息子のWAISを取ってみました【1】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

息子は9歳から発達具合や課題洗い出しのために2年に一度、WISCを取ってきましたが、年齢的(17歳)にも微妙だったので、今回からWISCではなくWAISを取ることにしました。

それぞれの数値は息子のプライバシーに関わることなので割愛しますが、そこから読み解ける彼の得手不得手(凸凹)、日常生活でどのような困り感として表れているかなど、お話ししたいと思います。

コラムでも何度かWAISやWISCについては書いていますが、改めておさらいしておきます。

WAISではそれぞれ

  • 言語理解(VCI)
  • 知覚推理(PRI)
  • ワーキングメモリー(WM)
  • 処理速度(PSI)

という4種類の指標得点を算出し、この指標により得手不得手(凸凹)を見ています。また、4つの指標の総得点であるFSIQ(IQ)も表されますが、これは前述の4つの指標がほぼ同レベルの人と4つの指標間で大きな差がある人では、学習面や社会生活を送る上で能力にかなりの差があります。FSIQが高いから優秀(成績が良い/仕事ができる)、FSIQが高いから生きやすい、とは限らないということです。

【1】では言語理解(VCI)と知覚推理(PRI)の2つの指標について少し詳しくお話しします。

言語理解(VCI)
一般的な知識や社会ルールの理解力も含め、言語を理解したり言葉で説明する能力
学校で教わる教科の学習の出来不出来というより、言葉を使って物事を理解し、また表現するために持っている潜在能力と言ったほうがわかりやすいかもしれません。

●知覚推理(PRI)
視覚情報から物事を理解したり、視覚情報をもとに推理思考する能力
論理的思考や状況理解力も見ることができます。この指数が低い人は、目の前の状況を理解、推理しパターン化したり分類することに苦手があります。

学園祭実行委員を例に説明します。 学園祭のために多くの人がさまざまな役割を担い、あるグループはアーチやポスターなど美術関係、あるグループはサークルごとの催し物について、あるグループは屋台など食べ物関係と分担しながら動いています。知覚推理(PRI)が低い人はこの状況を各々が何をしようとしているのか、どのグループが人手が足りていないのか、どう手伝えばいいのかが理解できません。状況理解が苦手とはこのような場面でも表れます。

企業でいえば、プロジェクトチームをイメージするとわかりやすいかもしれません。プロジェクトチームもメンバーが少人数あるいは個々で仕事を分担していると思います。誰が何を担当しているのか、誰が担当している仕事で遅延やトラブルが発生しているのか、誰が担当している仕事に変更が生じ、それがプロジェクト全体にどう影響するのか、などの状況理解が苦手として表れます。

【2】ではワーキングメモリー(WM)と処理速度(PSI)からお話ししていきます。

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ASDはなぜ攻撃的と言われるのか【2】

⚠︎:発達障害は先天的な脳の発達の偏りなので、親の躾や環境、また、本人のせいでもありません。発達障害をややこしくしているのは、無理解、無知からくる不適切な対応などでさまざまな神経症や精神疾患を併発したことによる二次障害といえます。

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

前回の続きで、今回はASDの脳機能や特性から考える、“なぜ感情コントロールが難しいのか?”をお話しします。

発達障害(グレー含む)があると、脳の前頭葉の一部で神経活動が低下していると言われています。前頭葉は感情をコントロールしたり、思考やさまざまな注意、情報処理や実行機能を司っています。この部分の働きが弱いと感情コントロールが難しく怒りっぽくなってしまうのです。

また、ワーキングメモリー(作業記憶/短期記憶)の問題もあります。ワーキングメモリーは、一時的に記憶を保持したまま複数のタスクを実行していくための必要不可欠な機能ですが、発達障害があるとワーキングメモリーの容量が少ないことがわかっています。

16歳の息子を例に出すと、一度にひとつの指示なら問題なく入りますが、指示が2つになるとひとつは怪しくなり、3つになると2つは抜け落ちます。記憶の保持が得意ではないので「食べ終わったら食器は下げて洗い、ポン酢は冷蔵庫にしまって、残った小鉢はラップをかけて冷蔵庫、忘れずにクスリも飲んでね」←こんな指示を出そうものなら、あちこち抜け落ちてグダグダになります(笑)

一斉指示が通りにくいと言われる理由はここにあります。

学校では「次の時間は体育だから、体操服に着替えたらハチマキを準備し、今日使うボールを体育館に取りに行ってから校庭に集合、班ごとに並んで待っていてください」などと指示されますが、抜けまくりです。ただ、周りを見て他のクラスメイトたちの真似をすることで、上手くいくこともあります。

横道に外れましたが、このワーキングメモリーは、不安や心配事があったりストレスフルになるとあっという間に容量がいっぱいになります。キャパシティーオーバーの状態です。

こうなると、他のことを考えたり感情をセルフコントロールすることまで脳の手(?)が回りません。誰でも思いどおりにならないとイライラしてしまうものですが、発達障害がある人は余計に負荷がかかり、イライラしやすくなるため、怒りっぽい/キレやすい、と思われてしまうようです。

ASDには、あちこちに本人にしかわからない“こだわり”があるのですが、そのこだわりの強さからイライラしやすく攻撃的に見えてしまう人もいます。

息子が通院している精神科は発達障害を専門に診ている数少ないクリニックなので、突き抜けて個性的な患者も多く、時折、こだわりを曲げられず折り合いもつけられず、受付でブチギレている人を見かけます。実際にこんなことがありました。

患者:あそこにある時計が5秒遅れている!予約の時間がもう15秒過ぎているが、時計が5秒遅れているせいで、自分は20秒も待っている!一体何秒待てばいいんだ!(怒)」←この人は両腕合わせて4個も腕時計をつけていました。

数や時間、決まった手順でのやり方などにこだわりがある発達障害の人は多いですが、秒単位で強いこだわりをみせる人に出会ったことがなかったので、『クリニックも大変だろうけど、何より本人が生きづらいだろうな・・・』と思いながら眺めていました。

こだわりの内容や強さは人によってまったく違います。一方で“こだわりは強いけど場面に応じてこだわりの順位を入れ替え”たり、自分なりの折り合いの付け方を身につけている人もいます。こういう人は順応力、適応力が高いため、ASDであるけれども周囲からはASDとは気づかれない傾向にあります。

このように、特性からくるあれこれで定型と言われている人たちに比べると、不快になったり怒りっぽくなってしまうのは事実です。

理由もなくブチギレているわけではないので、一旦クールダウンしたり、時間をかけて丁寧に聴き取る、などを試し、互いに良い関係を築けるよう心がけてみたいものですね。

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知能検査と言われるもの

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

心理検査は数値として表せるものから解釈が必要なもの、信頼度の高いものからセラピストの経験値で信頼度が変わってくるもの、簡単なものから時間のかかるものまで多種多様に存在します。

その中で、今回取り上げるWISC-Ⅳは、ウィスクフォーと呼ばれメジャーなテストです。

年齢別に、幼児用のWPPSI(ウィプシ)から児童〜19歳のWISC(ウィスク)、成人用のWAIS(ウェイス)と分けられており、現在は改訂されたWPPSI3版、WISC、WAISは4版になります。

発達障害が疑われる場合にも使われますが、これだけで発達障害がわかるという検査ではなく、一つのツールに過ぎません。知能検査と付いていてIQも出ますが、WISCやWAISで測定できるのは知能というより、さまざまな認知的部分です。

読者の中には自分でWAIS結果、お子さんのWISC結果を持ってる人もいるのではないでしょうか。

ここでは端折ってザックリと簡単に説明します。

WISCは大まかに、

  • 言語理解
  • 知覚推理
  • ワーキングメモリー
  • 処理速度

と分かれており、それぞれの合計から全検査IQが出されます。

言語理解や知覚推理ってナニ?それから一体何がわかるの?そう思いますよね。

言語理解は言語的なことを理解したり把握する能力。

知覚推理は物事を目で見て理解したり操作する能力。

ワーキングメモリーは注意、集中、記憶に関する能力。

処理速度は手先の器用さ、速さに関する能力を全体的にみています。

細かくお話すると、下位検査や群指数など専門的な話を交えなくてはならず、説明が長く難しくなり過ぎると思いましたので割愛します。

また細かく分けると、

●言語理解の中に
類似:概念を理解したり推理する能力。
単語:言語概念の形成や単語の知識。
知識:一般的な学習や事実についての知識量。
理解:一般常識や社会性を理解する能力。
●知覚推理の中に
積木模様:抽象的な視覚情報を分析し統合する能力。
行列推理:流動性知能(※1)や視覚性知能、空間把握に関する能力。
パズル:視覚情報の分析能力。
バランス:量的な推理な類比推理能力
絵の完成:重要な部分とそうでない部分を視覚から振り分ける能力。

※1)流動性知能:知能には流動性知能と結晶性知能があり、流動性知能は論理的思考力、計算力や関係把握などで動作性知能。結晶性知能とは社会全体に対する経験や知識、また技能プロセスなどで言語知能。

●ワーキングメモリーの中に
数唄:注意力や記憶力に関する能力。
算数:記憶力や計算能力。
語音整列:記憶力や注意力、継次処理(※2)に関する能力。

※2)継次処理:その人の認知、及び認知処理スタイルの違いで、【同時処理】【継次処理】があります。わかりやすく具体例を出します。

★あなたは夕食に何を食べましたか?という質問に、

(1)テーブルの上にご飯とアジの開きがあって、キュウリのサラダと豆腐の味噌汁にカボチャの煮物があった。

(2)煮物は・・・カボチャ、主菜はアジの開きだった。味噌汁に入っていたのは・・・豆腐だ。サラダはキュウリのサラダだったかな。

(1)のようにテーブル上のものを映像として思い出した人は、同時処理的な認知スタイル。(2)のように順番に思い出す人は継次処理的認知スタイル。同時処理は全体から細部へ理解していくタイプ、継次処理は細部から全体へ順番に理解していくタイプになります。

この認知スタイルの違いから、

同時処理的認知の人は視覚的、空間的情報優位。

継次処理的認知の人は聴覚的、言語的情報優位。

であると言えます。私たちはそのスタイルを状況により使い分けたり、組み合わせたりして情報処理しています。なので、はっきり『この認知スタイル!』と分かれることは少なく、どちらか寄り・・・くらいです。発達障害があると、どちらかに大きく偏りがあったり、突き抜けていることもあります。

●処理速度の中に
記号探し:集中力や作業効率に関する能力。
符号:視覚認知や速度に関する能力。
絵の抹消:運動や選択的注意(※3)に関する能力。

※3)選択的注意:さまざまな情報(視覚、聴覚)から、今、自分に必要な情報を選択し、そこに注意を向ける機能のこと。

数値が高い、低いと一喜一憂しそうになるものですが、高いから偉い、低いからダメ・・・そうではありません。数値のバラツキがあると生きづらさを感じる項目もありますが、

自身を知る一つのツールとして役立てることが正しい理解

です。

お願いできる部分は配慮をお願いすることや、ライフハックを身につけることで対策を取れることが多くありますし、今はさまざまな認知機能トレーニングができるアプリなども開発されています。

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