認知を歪ませるもの【2】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

連日暑い日が続きますが、如何お過ごしでしょうか。

さて前回の続きとなります。【1】でもお話ししましたが、認知は後天的に育まれていくその人の“物事の受け取り方”です。

機能不全家族の中で育つと認知は歪みやすいこともお話ししました。

では、それ以外ではどのような原因で認知は歪んでしまうのでしょうか?

生きていく中で、何の出来事も起きずに誰とも関わらなければ、良くも悪くも体験は生まれません。

失敗体験は誰にでもあることですし、失敗体験自体が悪でもありません。しかし、モラハラ上司(あるいはパートナー)に、小さな失敗や間違いをいちいち「何をやらせてもダメだ!」「君のように無能な人間は見たことがない」「見捨てないのは私だけだよ」「何度言ってもこれくらいできないなんて辞めてもらうしかない」「そんなことじゃ、もう別れる」・・・などと否定、ダメ出しばかり言われ続けたとしたらどうでしょう。

もちろん最初は「もう少し頑張ろう」「頑張ればできるかな」と思っていても、度重なる否定やダメ出しに心は削られていき、失敗ばかりの自分、何度やってもダメな無能な自分(思い込みですが)に自己肯定感はダダ下がります。

「どうせ何やっても私(オレ)なんてダメなんだ」と自分に諦めてしまします。

何かにチャレンジする機会があってもツラい経験の積み重ねから「自分なんかどうせまた失敗するに決まってる、自分はクズだ」と考えてしまい、踏み出すことができなくなるのです。

失敗する/間違う=自分は無能なんだ、という認知の歪みに繋がっているのがおわかりでしょうか。

他者を信じられない人は、信じられない根底に“裏切られる怖さ”を抱えているケースも多く見られます。誰でも傷つくのは嫌ですし、裏切られるのはもっと嫌なものです。

お付き合いする度にパートナーに裏切られてきた過去があると、無意識に「どうせまた裏切るんだろう」と思ってしまい、連絡がつかない、LINEに返事がないだけで「浮気しているに違いない」「嫌われたんじゃないか」と考えます。

自分の不安や認知の歪みを客観視できないことで、相手の都合を考えられず鬼電鬼LINEをし、本当に嫌われて終わります。←やっぱり私は嫌われるんだ/裏切られるんだ、という負の経験を積む結果になる。

パートナーだけではなく交友関係にも当てはまりますね。

過去、プライベートで自分のタイミングで連絡がつかない、と鬼電鬼メールしてくる人がいました。

「本当は私のこと、どうでもいいと思ってるでしょ?」

「メールくらいすぐ返せるのにメールくれないなんて私のこと嫌いでしょ?」

「私のこと、心配じゃないんでしょ?」

と、こちらの都合はマルっと無視です。

「きっと忙しいだな」「手が空いたら連絡来るだろう」という認知だったら、こうはならなかったはずです。

対面カウンセリングやセッション中には、それが誰でもどんな用件でも一切レスはできませんし(携帯を見ません)、寝ている時にも当たり前にレスはできません。仕事中などはすぐにレスを返せないことは多くの人が経験していると思います。

付き合いきれなくなり“お付き合い終了”となったわけですが、最後に言われたのが「結局ハルちゃんも私のこと裏切るんだ・・・」でした。

寝込むほどげんなり疲れたのは言うまでもありません。

認知の歪みは自分を縛りつけ、苦しめるだけでなく、人間関係も破壊しかねません。時々「この受け取り方って、一方向からの思い込みになってないかな」と意識してみるとよいかもしれませんね。

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『メンヘラ』と呼ばれる人たち

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

【メンヘラ】

もちろん正式な心理学用語ではありませんが、この単語が市民権を得てずいぶん経ちます。今では【ファッションメンヘラ】【ツンデレ】【ヤンデレ】と種類も豊富で、どこまでも広がりをみせ、進化し続けているのがメンヘラです。

親から受け継ぐ気質的なものが多少は関係しますが、生まれつきのメンヘラはいません。ならば、なぜメンヘラになってしまうのでしょうか。

メンヘラは自分に自信がありません。

親を含め他者からダメ出しや否定ばかりされていると、「自分はダメ人間なんだ」と思い込まされ、自尊感情が育ちません。これは抑圧によっても起こります。

「お前なんか何やってもまともにできない人間なんだ」と毎日言われ続けたら、初めは「そんなことない!」と思っていても「そっか・・・そうなんだ、私なんて何やってもダメで価値のない人間なんだ・・・」と劣等感に苛まれ自信がなくなりませんか?

自分で自分を大切にしよう、自分にはいいところもたくさんある、私は大切にされる価値のある人間なんだ・・・これが自尊感情です。

自分が嫌い、自分なんて・・・と劣等感が強く自己肯定感がとことん低いのもメンヘラの特徴ですが、これだけだと落ち込んで後ろ向きなネガティブ全開の時には誰もが陥る可能性があります。

しかし、メンヘラになると「こんな私は愛してくれる人なんていない、いるはずがない、私なんか誰からも必要とされない」と勝手に思い込むので、その人を大切に想う恋人や大切にしたいと思う友人の自分に向けられる愛情や好意を彼らが納得する証拠がなければ信じることができません。

その結果、「この人は本当に私を愛しているのか」「本当に私のことを大切にしているのか」を自分の尺度で確認するために、証拠が欲しくて“試し行為”に出ます。ほとんどが無意識におこなわれるため、本人に試し行為をしている自覚はありません。

  • 本当に好きならLINEの返事をすぐくれるはず
  • 既読無視なんて絶対しないはず
  • 本当に好きなら道行く異性を見たりしない
  • 本当に好きなら言わなくても私のことをわかってくれるはず
  • 本当に好きなら死にたいなんて言ったら私を心配してすぐに来てくれるはず
  • 本当の友達なら私の言ったことを否定しないはず

など、試し行為はあらゆる場面に及び、試し行為で一度は納得しても、そもそも根底には他者を信じられないベースが出来上がっているので、繰り返し繰り返し形を変え試し行為がおこなわれます。

パートナーや友達がメンヘラだと、いくらその試し行為に応えても底の抜けたバケツに水を注ぎ続けるように、一杯になる(満足する)ことはありません。満足(信用)できないのです。

感情のコントロールができないので、良くも悪くもスリリングで不安定な付き合い方になります。最初は人懐っこく感情表現が豊かな人だと魅力的に映りますが、あまりに感情の起伏が激しいと振り回されて一緒にいることがツラくなるほど疲弊します。

すぐ怒る、すぐ泣く、すぐ責める、すぐ自虐的になる、すぐ大量に薬や酒を飲む、すぐ手首を切る、すぐ被害妄想を炸裂させる・・・でもどっぷり依存する。

生まれつきのメンヘラはいないことを考えると、すべては後天的であり親を含め他者との関わりの中で傷つき体験を重ね、大きな歪みを生じ自己肯定感より自己否定感が上回ってしまった、と考えられます。

信じたいのに信じることができない。信じるために試し行為を繰り返し、それが原因で人間関係がズタボロになり周りに人が居なくなり、ますます自信を失くし「やっぱり自分は価値のない人間」「やっぱり愛されてない」「やっぱり誰も自分をわかってくれない」「やっぱり人は裏切る」と傷つき、さらに失敗体験を重ねてしまう、まるで負のスパイラルです。

とても辛いと思います。

メンヘラの多くはパーソナリティに何らかの問題を抱えています。そしてそれは生育歴にまで遡らないと複雑に絡まった糸玉を探すことも、ほぐすこともできないことがほとんどでした。本来の自分らしさを取り戻していくその過程も想像を絶する辛さの連続になる人が多く、あまりの苦しさに途中脱落していくクライエントも多くいます。

人の心はいとも簡単に操作されますし、傷つけられ続けると簡単に認知は歪みます。思い込みや被害感情ばかりが強くなり、それが認知の歪みを引き起こしていることにすら気づけなくなります。

ファッションメンヘラは知りませんが、なりたくてメンヘラになる人はいないと思っています。

発達障害とは違う生きづらさを抱えている人たち、それがメンヘラでもあるのです。

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