学習障害(LD)について深掘りする【3】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

今回は視覚機能から【眼球運動】【視覚情報処理】【視空間認知】【協応動作】についてお話していきたいと思います。

視力(モノを見る)の他に、大事な視覚機能がいくつかあり、その一つが【眼球運動】という機能です。この眼球機能には“追従性眼球運動”と“跳躍性眼球運動”があり、対象物を目でゆっくり追うような動きが追従、ドッジボールで素早い動きのボールを追ったり、ホワイトボードから手元の資料に視線を移動するような動きを跳躍と言います。

字を覚えるためには追従機能が、読書やスポーツには跳躍機能が大切になりますが、眼科でおこなう視力検査では残念ながらチェックできません。

ビジョントレーニングという言葉をご存知でしょうか。脳力検定にもあるようですし、書籍も出ていて簡単に自分(あるいはお子さん)でトレーニングに取り組むことができますので、気になる人は探してみてくださいね。

今回お話する【協応】は目と手の協応動作のことで、どのようなことかというと、

目から情報を使い(情報処理)、体を動かす

ことです。わかりやすい例だと、三角定規を2枚使い平行な線を引く、折り紙を折る、点と点を結ぶ、箸で豆を摘む、キャッチボールをする・・・などです。

目と手の協応に問題があると、目から情報を使い予測をして、体を協調させ動かすことが苦手になります。これは、視空間認知にも関わってくることで、私たちは視覚情報から自分と対象物の距離や位置を把握し、方向や向き、奥行きや高さ大きさという空間を予測し理解しているのですが、視空間認知に弱さがあると左右認識が曖昧、立体的な絵が描けない、よく物にぶつかる、という日常生活での困り感も表れてきます。

この力が弱いと学校ではひらがな、カタカナ、アルファベットを覚えるのが苦手で、“さ”と“ち”や、“b”“d”“q”などの、反転したり回転させると同じ形になる文字(記号)が捉えにくいということが起こり、結果、字を間違えたり書く読むことが苦手に繋がっていきます。

ビジョントレーニングと同様、自分(家庭)でも簡単にトレーニングできるので、最終回にいくつか紹介しようと思います。

<運営会社:Jiyuuku Inc.

視覚機能って?

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

今回はASD・ADHD重複を持つ息子を例にしながら、【視覚】についてさまざまな角度から簡単にお話したいと思います。

発達障害と言っても、<先の見通しを立てることが苦手><こだわりが強くて融通が利かない><部屋が片付けられなくてカオス><忘れ物が半端ない><先送り癖がヒドイ>といった、比較的わかりやすい特性だけを取り出して『ASDなんだから』『ADHDだし』と、困り感を一言で表すことはできません。

仮に診断名が同じであっても、特性の表れ方や濃淡には差がありますし、元となる性格の違い、見落とされがちですが、成育歴や取り巻く環境によっても本人の困り感、周りの困り感の表れ方が違うからです。

発達障害の中には、息子のように視覚機能に弱さがあるケースも非常に多く見られます。視力も数ある視覚機能の一つですが、視覚機能は視力だけを指すのではなく、

  • 眼球運動や両眼の使い方、それを調節する【入力機能】。
  • 視覚情報を記憶、認知したり想像する【処理機能/視覚認知】。
  • 見たものを体と協調させる【出力機能】。

があり、これらをまとめて【視覚機能】と呼びます。

視覚機能の“入力系”に弱さがあると、

  • 読むのにかなり時間がかかる。
  • 本を読む時に文字や行を読み飛ばしてしまう。
  • 読んでいるところがわからなくなる。
  • 板書を写すことに時間がかかる。
  • キャッチボールや球技が苦手。

“処理系”に弱さがあると、

  • 漢字やひらがなを覚えることが苦手。
  • 同じ間違いや反転文字(鏡文字)が多い。
  • 身振り手振りを真似することが苦手。

眼球運動機能や空間認知もこの能力に関係しています。

“出力系”に弱さがあると、

  • 細かい手作業が苦手。
  • スポーツが苦手(球技、縄跳び、跳び箱など)。

いろいろな場面で<不器用>という形で困り感が表れます。

視力だけが良くても、目で見た情報を処理する機能が上手く働かなければ、脳でその情報を処理できず体が動けなくなってしまいます。不器用さは手先指先だけのことと思われがちですが、実は視覚機能と深い関係があるのです。

次から次へと山のように困り感が噴出中の息子を例にすると、彼は学力に大きな問題がないにも関わらず、

●板書を写すこと。
●文字の大きさを揃えてバランスよく書くこと。
●スポーツ全般、特に球技。
●自転車に乗ること(乗れることは乗れます)。
●よく物を失くし見つけられない。
●紐を蝶結びしたり、ビニール袋を丸めて片結び。
●(服などの)ボタンを留める。
●工作や裁縫。

など多くのことに困り感があります。本人の自己理解や障害受容がまだまだのため、困り感といっても実際には本人はどこ吹く風の状態で、専ら私を含め、周りが支援だ、トレーニングだ、自己理解だ、と対応策に追われているのが実情です。

学校生活を送る彼の、視覚機能で一番の課題は“眼球運動”です。人は誰でも【眼球運動(情報入力)→ 視空間認知(情報処理)】という過程を辿りますが、眼球運動に弱さがあると、かなり生活に影響が出てきます。

この“眼球運動”には追従、跳躍とあり、追従はゆっくりめに眼球を動かす運動、跳躍は素早く眼球を動かす運動です。例えば、“右(左)から左(右)へ向け、ゆっくり移動させる指先を顔を動かさず目だけ(視点)で追う”は追従、“両手を広げて左右の指を一本立て、その間を顔を動かさず目(視点)だけで素早く移動させる”は跳躍、になります。

息子は追従運動にはさほど苦手ではありませんが、跳躍運動には問題を抱えており、ビジョントレーニングを継続していますが、頭痛まで加わりかなり疲れるようです。

視覚機能のチェックポイントの“入力系”“処理系”を見ていくと、幾つかの特徴があります。これはあくまで学校生活から見たチェックポイントになりますが、大人でも当てはまる部分があるので参考までに。

〜入力系〜
▷文字を読むのに時間がかかる。
▷読んでいるところがわからなくなる。
▷読む時に文字や行を読み飛ばしてしまう。
▷ボールの受け取りがとても苦手。
▷作業時に忙しなく視線を動かす。
▷板書や文字の書き写し(辞書を見ながらノートを写すなど)に時間がかかる。
▷図形が苦手。
〜処理系〜
▷左右を間違えやすい。
▷ひらがなや漢字を覚えることが苦手、同じ間違いや反転文字(鏡文字)が多い。
▷目で見て動き(体操、ダンス)を真似ることがとても苦手、あるいはできない。

『学校の勉強、全然できなくて・・・頭悪かったもんなぁ』が、知的な問題ではなく、実は視覚機能に何らかの弱さがあったのかもしれません。

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