メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。
今回はASD・ADHD重複を持つ息子を例にしながら、【視覚】についてさまざまな角度から簡単にお話したいと思います。
発達障害と言っても、<先の見通しを立てることが苦手><こだわりが強くて融通が利かない><部屋が片付けられなくてカオス><忘れ物が半端ない><先送り癖がヒドイ>といった、比較的わかりやすい特性だけを取り出して『ASDなんだから』『ADHDだし』と、困り感を一言で表すことはできません。
仮に診断名が同じであっても、特性の表れ方や濃淡には差がありますし、元となる性格の違い、見落とされがちですが、成育歴や取り巻く環境によっても本人の困り感、周りの困り感の表れ方が違うからです。
発達障害の中には、息子のように視覚機能に弱さがあるケースも非常に多く見られます。視力も数ある視覚機能の一つですが、視覚機能は視力だけを指すのではなく、
- 眼球運動や両眼の使い方、それを調節する【入力機能】。
- 視覚情報を記憶、認知したり想像する【処理機能/視覚認知】。
- 見たものを体と協調させる【出力機能】。
があり、これらをまとめて【視覚機能】と呼びます。
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視覚機能の“入力系”に弱さがあると、
- 読むのにかなり時間がかかる。
- 本を読む時に文字や行を読み飛ばしてしまう。
- 読んでいるところがわからなくなる。
- 板書を写すことに時間がかかる。
- キャッチボールや球技が苦手。
“処理系”に弱さがあると、
- 漢字やひらがなを覚えることが苦手。
- 同じ間違いや反転文字(鏡文字)が多い。
- 身振り手振りを真似することが苦手。
眼球運動機能や空間認知もこの能力に関係しています。
“出力系”に弱さがあると、
- 細かい手作業が苦手。
- スポーツが苦手(球技、縄跳び、跳び箱など)。
いろいろな場面で<不器用>という形で困り感が表れます。
視力だけが良くても、目で見た情報を処理する機能が上手く働かなければ、脳でその情報を処理できず体が動けなくなってしまいます。不器用さは手先指先だけのことと思われがちですが、実は視覚機能と深い関係があるのです。
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次から次へと山のように困り感が噴出中の息子を例にすると、彼は学力に大きな問題がないにも関わらず、
●板書を写すこと。 ●文字の大きさを揃えてバランスよく書くこと。 ●スポーツ全般、特に球技。 ●自転車に乗ること(乗れることは乗れます)。 ●よく物を失くし見つけられない。 ●紐を蝶結びしたり、ビニール袋を丸めて片結び。 ●(服などの)ボタンを留める。 ●工作や裁縫。
など多くのことに困り感があります。本人の自己理解や障害受容がまだまだのため、困り感といっても実際には本人はどこ吹く風の状態で、専ら私を含め、周りが支援だ、トレーニングだ、自己理解だ、と対応策に追われているのが実情です。
学校生活を送る彼の、視覚機能で一番の課題は“眼球運動”です。人は誰でも【眼球運動(情報入力)→ 視空間認知(情報処理)】という過程を辿りますが、眼球運動に弱さがあると、かなり生活に影響が出てきます。
この“眼球運動”には追従、跳躍とあり、追従はゆっくりめに眼球を動かす運動、跳躍は素早く眼球を動かす運動です。例えば、“右(左)から左(右)へ向け、ゆっくり移動させる指先を顔を動かさず目だけ(視点)で追う”は追従、“両手を広げて左右の指を一本立て、その間を顔を動かさず目(視点)だけで素早く移動させる”は跳躍、になります。
息子は追従運動にはさほど苦手ではありませんが、跳躍運動には問題を抱えており、ビジョントレーニングを継続していますが、頭痛まで加わりかなり疲れるようです。
視覚機能のチェックポイントの“入力系”“処理系”を見ていくと、幾つかの特徴があります。これはあくまで学校生活から見たチェックポイントになりますが、大人でも当てはまる部分があるので参考までに。
〜入力系〜 ▷文字を読むのに時間がかかる。 ▷読んでいるところがわからなくなる。 ▷読む時に文字や行を読み飛ばしてしまう。 ▷ボールの受け取りがとても苦手。 ▷作業時に忙しなく視線を動かす。 ▷板書や文字の書き写し(辞書を見ながらノートを写すなど)に時間がかかる。 ▷図形が苦手。
〜処理系〜 ▷左右を間違えやすい。 ▷ひらがなや漢字を覚えることが苦手、同じ間違いや反転文字(鏡文字)が多い。 ▷目で見て動き(体操、ダンス)を真似ることがとても苦手、あるいはできない。
『学校の勉強、全然できなくて・・・頭悪かったもんなぁ』が、知的な問題ではなく、実は視覚機能に何らかの弱さがあったのかもしれません。
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