学習障害(LD)について深掘りする【5】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

いよいよ最終回となる今回は、自分で(お子さんと一緒にも)ゲーム感覚でおこなえるトレーニングを幾つかご紹介しようと思います。

(1)渦巻きを書く。

・テーブルや床に“右手人差し指で右巻き渦巻き”(ぐるぐる)を書く練習をします。
・次に“左手人差し指で左巻き渦巻き”を書く練習をします。
・スムーズにできるようになったら、次に“右手で左巻きの渦巻き”を書く練習をします。

これは視覚、触覚を使ったボディーイメージを鍛える訓練で、指でできるようになったらペンを使って書いてみましょう。左右弁別(違いを見分ける)があやふやなお子さんにも効果的です。
(2)パズル(タングラム)で、図形見本のとおりに作る。

これは私立小学校受験問題集(図形探し/いくつもに区切られた大きな四角の中に、いくつ三角形があるかなどを探す)を使うと案外楽しくカタチ認識を鍛えることができます。いくつか挙げておきます。→【例本】
(3)間違い探しで遊ぶ。

雑誌の懸賞や100均でも売っている“間違い探し”。これは背景の中にある見たい(見つけたい)モノを見つけ出す、という図地弁別です。この図地弁別が苦手だと似た文字を間違えたりが起こります。一時期流行った“ウォーリーをさがせ”などがとてもオススメです。
(4)視線移動する。

・部屋の1、2メートル離れた場所にあるモノ(例えばカレンダー、時計など)を、首や頭を動かさずに交互に素早く視線移動させる。
・両腕を真っ直ぐに伸ばし、両人差し指を立て、首や頭を動かさずに交互にその人差し指を素早く視線移動させる。
・紙にランダムに数字を1〜20ほど散らばせて書き、これも首や頭を動かさずに視線だけで1から順に追う。

これは3つとも視覚機能の“跳躍”のトレーニングになります。
目と手の協応を鍛えるには、あやとりやお手玉、輪投げやけん玉、ジェンガが有効です。けん玉やジェンガは協応だけでなく、注意・集中・視空間認知も鍛えられるので特にオススメです。

次に、視覚記憶、聴覚記憶のトレーニングです。

(1)神経衰弱

これはわかりやすい視覚記憶を使うゲームです。
(2)しりとり1

ただのしりとりではなく、これを複雑しりとりにしてやります。
しりとりは言葉の“音”を意識したり、弁別認識する力をトレーニングするのにはうってつけです。
複雑しりとりのルールは、“前の人が言った言葉をリピートしてから自分の言葉を言う”それだけです。
相手が「リンゴ」と言ったら、「リンゴ、ゴミムシダマシ(ゴーヤ、ゴシキヌマ、ゴリョウカク・・・)」というふうに。

相手が小さな子供であれば、わかりやすい短い言葉が良いと思いますが、大人同士なら頭を捻りに捻って長い言葉にしてみるとよいのではないでしょうか。

(3)しりとり2

複雑しりとり2です。ここでは相手が言った言葉を反対に繰り返ししりとりをします。
例)リンゴ → ゴンリ と繰り返してからゴーヤ、次の人もヤーゴ → ヤジルシ、と続けます。ワーキングメモリーも鍛えられ、言葉をひっくり返す時にも頭を使います。

『あっち向いてホイ!』も、ボディーイメージを鍛え、左右弁別の訓練になります。

昔からある手遊びや言葉遊びには、偶然にも脳を発達、訓練になる要素がたくさんあるので、改めて見直してみると楽しいかもしれませんね。

余談ですが・・・。

私は大人げないので、寒い朝のゴミ出しを賭けて、中学生の息子とジェンガでガチンコ勝負したり、晩ご飯作りを賭けて、けん玉真剣勝負をしています。結果、私が勝つと晩ご飯が目玉焼きと丸ごとキュウリ1本になることもありますが、14歳の息子とこんなふうに笑い合い、ぶつかり合う時間はもう10年もないことを思うと、この時間も貴重な時間だと感じています。

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学習障害(LD)について深掘りする【4】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

ディスレクシアについて理解するシリーズ、今回は【ディスレクシアの人に最後まで残ってしまう課題】についてです。

ディスレクシアの人にはダブルビジョンという、文字が重なり合って見えたり、文字が揺れ動いたり、歪みに歪んでダブって見えたりするという特徴的な見え方になる人がいます。

これは視覚機能訓練をしてくれる大きな眼科や、子供であれば専門家がいる療育施設などでの訓練で改善が見込めますが、とても数が少ない現状があります。

今回のシリーズでも少し書いた【流暢性】、覚えていますか?

これは処理速度の問題です。文字が読めるようになっても、一文字一文字拾うようにしか読めなければ当然スピードは遅くなります。

一文字ずつゆっくり読んでいると、最終的に何が書いてあったのか理解できない、だったり、記憶の一時保持(ワーキングメモリー)に弱さがあることで、理解したことも記憶からこぼれ落ちていってしまったりします。

また、書くことにも苦手があって時間がかかると、書いているそばから『・・・何を書こうとしてたっけ??』が起こったり、テストが時間内に終わらない、資料が時間内に仕上げられないということも起こります。

学校でも社会人になっても困り感がありそうです。

最終回となる次回は、私が自宅で息子にやっている【視空間認知】【図の弁別(違いを見分ける)】【追従性眼球運動/跳躍性眼球運動】【粗大運動/微細運動】【協応】【聴覚記憶】【ボディイメージ】など自分でできる超簡単なトレーニングをいくつか紹介します。

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学習障害(LD)について深掘りする【3】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

今回は視覚機能から【眼球運動】【視覚情報処理】【視空間認知】【協応動作】についてお話していきたいと思います。

視力(モノを見る)の他に、大事な視覚機能がいくつかあり、その一つが【眼球運動】という機能です。この眼球機能には“追従性眼球運動”と“跳躍性眼球運動”があり、対象物を目でゆっくり追うような動きが追従、ドッジボールで素早い動きのボールを追ったり、ホワイトボードから手元の資料に視線を移動するような動きを跳躍と言います。

字を覚えるためには追従機能が、読書やスポーツには跳躍機能が大切になりますが、眼科でおこなう視力検査では残念ながらチェックできません。

ビジョントレーニングという言葉をご存知でしょうか。脳力検定にもあるようですし、書籍も出ていて簡単に自分(あるいはお子さん)でトレーニングに取り組むことができますので、気になる人は探してみてくださいね。

今回お話する【協応】は目と手の協応動作のことで、どのようなことかというと、

目から情報を使い(情報処理)、体を動かす

ことです。わかりやすい例だと、三角定規を2枚使い平行な線を引く、折り紙を折る、点と点を結ぶ、箸で豆を摘む、キャッチボールをする・・・などです。

目と手の協応に問題があると、目から情報を使い予測をして、体を協調させ動かすことが苦手になります。これは、視空間認知にも関わってくることで、私たちは視覚情報から自分と対象物の距離や位置を把握し、方向や向き、奥行きや高さ大きさという空間を予測し理解しているのですが、視空間認知に弱さがあると左右認識が曖昧、立体的な絵が描けない、よく物にぶつかる、という日常生活での困り感も表れてきます。

この力が弱いと学校ではひらがな、カタカナ、アルファベットを覚えるのが苦手で、“さ”と“ち”や、“b”“d”“q”などの、反転したり回転させると同じ形になる文字(記号)が捉えにくいということが起こり、結果、字を間違えたり書く読むことが苦手に繋がっていきます。

ビジョントレーニングと同様、自分(家庭)でも簡単にトレーニングできるので、最終回にいくつか紹介しようと思います。

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学習障害(LD)について深掘りする【2】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

今回はなぜディスレクシアだと困るのかと、実際の“苦手”とは?についてお話します。

前回、ディスレクシアだと読んだり書いたりすることが苦手だとお話しました。ただこれは、脳の機能不全からくる目につきやすい症状の一つであり、実際の生活では他にもさまざまな課題が持ち上がっています。

  • 鏡文字(反転文字)を書いてしまう。
  • 無意識に文字を入れ替えてしまう。
  • とっさに名詞が出てこない。
  • 耳慣れず見慣れない単語を読み間違えたり発音を間違える。
  • 人名や地名を間違える。
  • 長文に集中が続かず、読み飛ばしや読み間違え、何が書いてあったかわからなくなる。
  • 似た音を聞き間違える(カギ→カキなど)
  • 日本語の特殊音節や助詞を使うのが苦手(デパートがデーパートになったり、デーパト、デパトになったりする)。
  • 空間認知が弱いので、よく物にぶつかる、落とす落ちるなど怪我が多い、また、よく物をひっくり返したり壊す、など。

実生活でもいろいろ困りそうですよね。おっちょこちょい、慌てん坊、これももしかしたら脳の機能不全からくるのかもしれません。

ここまでで気付いたことはありませんか?

そうです、

ADHDに表れる特徴と被っているのです。ADHDだとディスレクシアも重複しやすかったり、苦手部分が被ったりしています。

ディスレクシアという視点から“聞いて理解、見て理解”を少しお話します。

【音を聞き】取る。とてもザックリしていますし、「耳は悪くないよ、聴力検査でも異常なしだったし」と思う人もいるでしょう。音がしているかどうか気付くこと、これは耳が機能しているか(ちゃんと聞こえているか)どうか知覚的にわかるかどうかですが、ディスレクシアがあると『ぼうし(帽子/防止)』や『チョコレート』『りょこう(旅行)』『サッカー』など伸ばす音や、『ちゃ』『りょ』『ッ』『パ』などの特殊音や破裂音を正しく聞き取ることが苦手で、聞き間違い、聞き漏れが出ることがあります。

知覚的に音がするかどうかに気付くと、次にどんな音が出ているかという“言葉”の聞き取り、聞き分けになります。言葉の聞き分けとは似ている言葉(はし/かし、ろば/おば)を聞き間違えないかどうかです。

そして、次に周りにある関係のない音の中から自分に必要な聞きたい音だけを選択して聞き取れるかどうかです。以前のコラム【さまざまな注意】でもお話しましたが、選択的注意のことです。

知覚的に聞き取りが苦手だと、周りにある関係のない音も同じ大きさで一緒に拾ってしまい、必要な音だけを選択して聞き取ることも苦手です。

音に気付くことができ、聞き取りもできて、選択的に自分に必要なことを拾い聞くことができても、最後にある“言葉の意味が理解できない”という課題があると、『音は聞こえる、音の聞き取り聞き分けもできる、単語も拾える、でも文章としての意味がわからない』ということが起こります。最近注目されるようになった【聴覚情報処理障害/APD】です。

次回以降は【見て理解】するから、言語理解〜流暢性についてお話しようと思います。

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学習障害(LD)について深掘りする【1】

メンタル・イデア・ラボの本城ハルです。

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

本年最初のコラムは学習障害(LD)についてです。何回かに分けて学習障害(LD)の特性や自宅でもできるトレーニングについてお話していきたいと思います。

今回取り上げる読み書きのLDはディスレクシアとも言います。視力や聴力に問題はなく、知的な遅れもないのに中枢神経に機能不全があることで、文字(記号)と言葉(音)が結びつきづらく、読み書きに関して躓きや学習面での困り感が出てしまう“機能障害”です。知的障害ではないので注意してください。

発達障害と併発することも多く比較的気付かれやすいのですが、LDだけだと気付かれにくく“知能が低い”“勉強ができない”と思われがちです。

ディスレクシアの特性として、

知能の高さに比べ、読むこと書くことや記憶に特徴的な困難さがありますが、論理的能力は問題なく、話し言葉は高いレベルで理解できます。

  • 視力(視る力)に問題はありませんが、視覚情報処理(図、地を見たり、見たものを理解する力)や、見たことを一時的に記憶として保持する力が弱いので、左右がわからない、板書や書き写しが苦手、文字の見間違いが起こります。
  • 聴力(聴く力)に問題はありませんが、聴覚情報処理(聞いたことを一時的に記憶として保持する力や聞いたことを理解する力)に弱さがあるので、聞き間違い、聞き漏らしが多く(聞き直しも多い)、電話対応は苦手です。

文字(記号)と言葉(音)が結びつきにくい、とはどのようなことでしょうか。例えば、

【ま】← “記号”は【m+a】← “音”

ということがわからないので、読むことや書くことに時間がかかります。

文字を読む、ということは【音声化】と【理解】がセットになって情報処理されるのですが、ディスレクシアは音韻理解の力が弱く、音声化に問題を生じると言われています。

ここで課題になるのが、普通の速さで滑らかに読める(流暢性)で、一文字一音節の平仮名、カタカナは読めても、漢字の読みが苦手などが起きます。声に出しての音読をしなければ、字面を拾いながら書かれている意味はそれなりに理解できるので、本人は読みが苦手という意識を持ちづらいのです。

書くことに困り感があると、字のバランスが悪くマス目や罫線からはみ出したり、字が汚く読めない(時には書いた本人すら読めない)ということが起こります。息子はこのタイプで、丁寧に観ていくと視力に問題はなくても“視覚機能の跳躍”に弱さを抱えていることがわかりました。

また、文章構成が苦手で正しい文法で文章が書けないという困り感や、視空間認知や記憶に弱さがあると、目で見たとおりに書けない、字の細部まで覚えられないので正しく書けない(れ/ね/る、や、鏡文字になるなど)という問題が生じます。

ディスレクシアがあると作業記憶(ワーキングメモリ<一時的に記憶を保持しておく力>)にも弱さがある人が多いので、指示行動が苦手だったり、電話の要件を聞き取りメモすることや、次にやろうと思っていても他に注意を移した途端にやろうとしていたことを忘れたりと、日常生活いたる場面で失敗を繰り返すなどが出てきます。

次回は、ディスレクシアだと学校ではなぜ困り感が出るのか、社会に出た時にどのような困り感に繋がるのかをお話します。

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